2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の婦人教育政策におけるジェンダー・ポリティクス
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23730737
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
羽田野 慶子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (50415353)
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Keywords | ジェンダー / 婦人教育 / 社会教育 |
Research Abstract |
平成24年度は、以下の作業を進めた。 (1)国立婦人教育会館設置に関する行政文書の閲覧・分析をおこなった。1977年の国立婦人教育会館の設置に関する行政文書は、現在、国立女性教育会館女性アーカイブセンターに所蔵されている。これらを閲覧・分析し、設置をめぐる具体的な議論の内容、設置を求める諸勢力(行政組織内の力学、女性団体の要望の内実、フェミニスト研究者らの意図など)の布置関係を明らかにし、NWEC設立をめぐるポリティクスの解明を試みた。 (2)戦後の婦人教育行政の端緒にあたる婦人教育研究全国協議会の記録を閲覧し、社会教育における婦人教育の内容と方法の波及のあり方について分析を進めた。 (3)婦人教育行政に関わった政治家、研究者、社会運動家等の言説の収集・分析として、上記(1)と並行し、婦人教育行政およびそれらに関連する政策に関わった政治家、研究者、社会運動家等の言説を収集・分析し、婦人教育課の設置とその後の政策、NWEC設立とその後の事業展開をめぐるジェンダー・ポリティクスを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、前年度までに行った行政文書、NWEC設立関係文書、婦人教育政策に関する先行研究の整理・分析をふまえ、社会教育局婦人教育課に在籍したOG、NWEC設立に関与した人々、NWEC設立当時のOBOG職員を対象とした聞き取り調査を実施する予定であったが、その前段階として周辺の政治家・運動家の言説収集を優先させたため、未実施である。具体的には、①婦人教育課が設置される1961年以前からNWEC設立の1977年以降1980年代前半頃までに婦人教育課に在籍したOG、中でも特にNWEC設立に関わった当時の職員、②71年に発足した婦人会館調査研究協力者会議のメンバーおよび設立を強力に支えた女性団体のキーパーソン、③NWEC設立時から2000年頃までの歴代館長および実際の事業の企画・運営に関わった職員に対し、①婦人教育課設置およびNWEC設立をめぐる行政内部の経緯の実際、②NWEC設立を要望した諸勢力と設立に至るまでの討議、③NWECにおける婦人教育事業の内容の変遷とそれらを所管する婦人教育課との関係について話を聴く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)婦人教育・家庭教育・純潔教育に関する実践記録分析 戦後の社会教育行政の範疇で行われた婦人教育・家庭教育・純潔教育に関する実践記録を収集し、その内容におけるジェンダー・ポリティクスを分析する。婦人教育に関しては、1954年度から56年度にかけて行われた稲取実験婦人学級に関する実践記録がNWEC女性アーカイブセンターに所蔵されているほか、『婦人学級事例集』(文部省社会教育局、1960-74)、伊藤雅子らによる女性問題学習の記録がある。家庭教育に関しては、1963年度から文部省が全国に奨励した家庭教育学級の実践記録として、『家庭教育学級の現状』(文部省社会教育局、1966-67)のほか、自治体レベルで刊行された報告書およびそれらを分析した研究が存在する。純潔教育に関しては、文部省社会教育局および社会教育連合会によるテキストを参照する。 (2)NWEC事業の実践記録分析 婦人教育政策とジェンダー平等政策の結節点として、NWECにおける事業内容の変遷とそこでの実践の分析は重要である。NWEC女性アーカイブセンター所蔵の各種事業報告書、研修参加者による記録等を収集し、NWECの展開した事業内容と婦人教育課における政策との関係を明らかにし、NWEC事業がジェンダー平等の推進にとってどのような役割を果たし、またどのような限界を有してきたかについて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国立女性教育会館女性教育情報センターおよび女性アーカイブセンター所蔵の婦人教育政策に関する行政文書の閲覧をすすめるため、当該施設訪問のための旅費を使用する。一部の文書については、東京大学教育学部図書館および筑波大学総合図書館にて閲覧を進める。 婦人教育行政関係者への聞き取り調査において、旅費、謝金、および記録等に必要な物品費、テープ起こし作業の業者委託費等を使用する。 論文発表の際には、印刷費もしくは抜き刷り等購入費、および関係者へそれらを配布するための郵送費等を使用する。 その他、関連する知見の収集のため、社会教育、社会政策、女性学等、関連学会等へ参加する(旅費)。
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