2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730742
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
上原 直人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20402646)
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Keywords | 社会教育 / 公民教育 / 政治教育 / 青年教育 / 選挙啓発 / 市民教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦後初期社会教育の基底に存在した公民教育論の特質を、主に思想史の観点から考察することを通じて明らかにすることである。公民館構想の提唱者である寺中作雄の公民教育論を中心に、これまで、いわゆる戦前リベラリストと呼ばれる数人の論者に着目し考察を進めてきたが、平成24年度は、主に次の三点から研究を進めることができた。 第一が、戦前における青年教育の実践者として知られる下村湖人に着目し、彼の代表的な実践である青年団講習所の取り組みについての、歴史資料の収集と分析を進めたことである。青年団講習所については、これまで本格的に検証されてきたことがなく、今回、膨大な資料の発掘ができたことによって、今後、下村湖人についてさらに掘り下げた検討が可能となるだろう。来年度は、こらまでに収集した資料の分析を着実に進めていくことが重要となる。 第二が、下村湖人をはじめとした戦前リベラリストたちの思想形成過程の背後にある構造について、国体論と日本的民主主義の考え方、選挙粛正運動と公民教育論の関係等についての考察を深めるための、資料収集と分析を進めたことである。その中でも、特に戦前リベラリストたちが、どのような国体観をもち、選挙粛正運動にどのように関わったのかについての考察を行った。 第三が、本研究課題を比較教育学の観点から深めるべく、韓国の公民教育の現状と歴史についての考察を進めたことである。関係機関へのヒアリングと資料収集を行い、現状分析についてはある程度考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、平成23年度に引き続き、研究計画の中心にすえていた下村湖人について、その資料収集及び分析をある程度進めることができた。さらに構造的な分析や比較教育学の視点からの研究も深めることができた。したがって、研究目的の達成にむけて、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を、今後推進していく上では、次の三つのプロセスが重要となる。第一が、下村湖人について、一通り資料収集と基礎的な分析は終えているので、戦前から戦時下をへて、戦後改革期に至るまでの、下村の教育思想及び実践の総合的な検証を行うことである。 第二が、下村をはじめとした戦前リベラリストたちの思想形成過程の背後にある構造について、国体論と日本的民主主義、選挙粛正運動と公民教育論については、一通りの資料収集と基礎的な分析を終えているので、まだ十分に行えていない、日本の公民教育論の形成に影響を与えたとされるドイツのケルシェンシュタイナーの公民教育論等について、資料収集と分析を行うことである。 そして、第三が、これまでの思想分析や構造分析もふまえた上での総合的な検討を行うことである。戦前リベラリストたちの思想の比較検証、構造的な背景が戦前リベラリストたちの思想形成にどのように影響を与えたかの検証を通じて、本研究の最終的な課題である、戦後初期社会教育の基底に存在した公民教育論の実像にせまっていけるものと思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
下村湖人をはじめとした戦前リベラリストたちの思想分析も、まだそれなりに必要となるので、資料収集のための旅費が、次年度もある程度必要となる。また、ドイツや韓国の公民教育論との関係を分析する上で、海外調査も実施する予定なので、ある程度まとまった旅費が必要となる。さらに、古い資料の印刷及び製本代、関連図書の購入費、研究成果を発表するための学会参加のための旅費も必要である。
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