2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730742
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
上原 直人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20402646)
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Keywords | 社会教育 / 公民教育 / 政治教育 / 選挙啓発 |
Research Abstract |
本研究の目的は、社会教育の組織化が図られていった1920年代から戦後改革期に焦点をあてて、その根底にある公民教育の思想を構造的に分析することを通じて、社会教育における公民教育の性質を明らかにすることである。特に、戦後初期社会教育観の基底に存在した公民教育論の特徴を、戦前の公民教育論の影響と戦後直後の公民教育構想の展開との両面から、思想構造的に明らかにすることを最終的な目標において分析を行ってきた。 平成23年度から24年度にかけて、戦前における青年教育の実践者として知られる下村湖人の教育思想と教育実践について検討を行うとともに、下村をはじめとした戦前自由主義的知識人たちの思想形成過程の背後にある構造についての検討を行った。その上で、平成25年度は、これまでの研究の総合的な考察を、主に以下の二つの観点を重視して行った。 第一が、公民教育を捉える枠組みに関する検討で、公民教育史観が見直されつつある中で、本研究においては、公民教育に内在する「国民統合の論理を基調とした国家主義的な公民教育」と「政治主体形成の論理を基調とした民主的な公民教育」という両義性に着目した。第二が、これまで検討した戦前自由主義的知識人(関口泰、前田多門、蝋山政道、田澤義鋪、下村湖人)の公民教育論の比較検討と戦後(寺中作雄の公民館構想)への影響に関する検討である。 本研究を通じて明らかになった点は次のようにまとめられる。戦後初期社会教育観(戦後公民館構想)の基底に存在した公民教育論の特徴は、寺中が公民教育を公民館という地域の施設を中心に展開しようとした点において、戦前からの実践的立場(田澤、下村)の系譜に位置付けられるが、寺中が文部官僚の立場として、公民教育を論じ公民館を普及させていった点においては、講壇的立場(関口、前田、蝋山)の側面も有していたといえる。
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