2011 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における学生経済支援制度と低所得学生の大学進学・修学保障
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23730748
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 香奈 広島大学, 教養教育本部, 准教授 (30325203)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 高等教育 / 奨学金 / アメリカ / 学生経済支援 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ合衆国の高等教育における学生経済支援に注目し、高等教育の機会均等を保障する経済支援制度の特質について考察することを目的としている。学生経済支援とは、給付・貸与奨学金の他、ワークスタディ、教育減税といった支援を広く含む概念であり、その制度は非常に多様で変化が大きい。そこで、本研究では連邦政府・州政府・大学による経済支援制度の成立・展開とその特質・課題を考察し、特に低所得学生の大学進学・修学にもたらす効果について検証する。 初年度の平成23年度は、1)アメリカにおける学生経済支援の先行研究およびデータの収集・整理、2)連邦レベルの学生経済支援の動向の現地調査、3)特色ある州(ペンシルバニア州)の訪問調査、4)アメリカ高等教育学会(Association for the Study of Higher Education, ASHE)の年次大会 (2011年度大会:ノースカロライナ州シャーロット) への参加・情報収集、を行った。 これらの成果の一部は、日本教育行政学会第46回大会(2011年10月9日、九州大学)において「アメリカにおける政府学生ローンの延滞・債務不履行問題」というテーマで研究発表を行った。また、同タイトルの紀要論文を日本高等教育学会編『高等教育研究』第15集(2012年5月末刊行予定)に投稿し、掲載が受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は連邦政府・州政府・大学による経済支援制度の成立・展開とその特質・課題を考察し、特に低所得学生の大学進学・修学にもたらす効果について検証することを目的に掲げている。 初年度は特に連邦学生経済支援制度の課題である学生ローンの延滞・債務不履行問題に注目し、国内外の先行研究レビューならびに訪問調査を実施した。これらの成果を日本教育行政学会で発表するとともに、日本高等教育学会編『高等教育研究』第15集に投稿し、掲載が決定した。当初の計画どおり順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は(1)連邦・州政府による給付奨学金制度に関する検討、(2)州の学生経済支援のケーススタディ、(3)所得階層別にみた経済支援の受給状況と大学入学後の学業継続・卒業状況の関係についてデータ分析を行う。(1)については文献レビューならびに現地調査(ワシントンD.C.)を実施する。(2)についてはペンシルバニア州のケーススタディを実施する。ペンシルバニア州では高等教育支援機構(Pennsylvania Higher Education Assistance Agency, PHEAA)、公立・私立大学の学生経済支援部(ペンシルバニア州立大学、ペンシルバニア大学、ピッツバーグ大学等)を訪問調査する。ペンシルバニア州は全米で最も公立大学の授業料水準が高い地域として知られている。州内出身学生であっても高額の授業料・納付金を支払わなければならない。この状況に対して州政府の給付奨学金やローン制度、公立大学の授業料減免制度等はどのように整備されているのか、また、実際にこれらの州では所得階層別の大学進学格差や学業継続・卒業率格差が存在するのか、といった問題を調査する。最後に(3)については大学入学・学業継続と奨学金の関係についての研究をレビューし、可能であればデータを分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワシントンD.C.の学生経済支援関係機関およびペンシルバニア州の高等教育支援機構ならびに各大学を訪問調査するため、渡航旅費等の諸費用約50万円を予定している。さらに、研究成果の発表のための学会参加費・国内旅費も約10万円予定している。その他、物品費、謝金等を予定している。
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