2011 Fiscal Year Research-status Report
共同的「子ども‐おとな」意識形成に関するナナメ関係の理論的・質的研究
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23730749
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
遠藤 野ゆり 山口大学, 教育学部, 講師 (20550932)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育学 |
Research Abstract |
23年度はインタビュー調査ならびに理論研究を行った。インタビュー調査は、本研究の実証部分であり、追跡的な調査を3年間にわたって行う予定である。23年度は調査対象NPOのボランティア30名に対して行った。アンケート調査ではなく詳細なインタビュー調査をこの規模で行っている研究は、電話相談事業の研究においても、ナナメの関係づくりの研究においても類を見ないものであり、今後さらに期間、規模を拡大していく。インタビュー内容の考察は、調査途中段階にてすべてを総括するに至っていないが、この研究では、ボランティアの対話における倫理の問題を明らかにする必要がある、という考えにいたった。上記の理由から、基礎研究となる理論研究は、倫理研究を中心に行った。23年度は、資料収集、ならびにその精読を中心としており、TeunissenおよびWaldenfelsの論文については、精読の途中であるが、対話哲学に関する本邦の研究にヒントを得て、倫理の問題から迫った。発展的研究となる比較研究の準備として、イギリスのチャイルドラインに関する文献調査を行い、イギリスでのチャイルドライン実施の現状を把握した。資料はCiNiiで入手できたものである。イギリスはチャイルドライン発祥の国であり、日本とは異なる方向(ヘルプラインとしての機能を果たす)へ進んでいる。児童福祉先進国のイギリスについて調査することは今後の日本のナナメ関係づくりにむけて重要なカギとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、理論研究、インタビュー調査、比較研究の三部構成であるが、追跡的インタビュー調査は順調に進んでいる。ただ、インタビュー対象者の都合で、調査の時期が年内のやや後半にずれこんだため、23年9月での学会発表が行えなかった。理論研究は対話論について倫理研究という新たな側面に発展し、24年度実施予定だった研究を先取りして論文にまとめているが、その分、23年度実施予定であったドイツ哲学対話研究がすべて完了はしていない。その理由として、対話哲学に関する識者との検討会が必要であったが、23年度内には旅費と期間の関係で実施できなかったことがあげられる。24年度に展開予定である。比較研究については、24年度移行が中心となり、23年度は実地調査の前段階としての文献研究がおおむね予定どおり行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しており、今後も継続していく予定である。23年度予算に関しては、次の3点の理由から未使用額が生じている。一つ目は、理論研究の23年度と24年度の順番が入れ替わったことにより購入図書に変更が生じたため、二つ目は比較研究の文献研究として購入予定だった論文の一部がCiNiiで無料で入手できたため、三つ目は24年度以降の作業分も含めて必要と目されたプリンタのインクが23年度内は補充する必要がなかったためである。理論研究は24年度分の一部を先取りしたために、23年度の未遂部分も含めて行う予定であり、特に研究をスムーズに進めるために識者を招へいしての研究会を実施するなどの改善をする予定である。インタビュー調査は継続していくが、中間のまとめを24年度に行う予定である。論考をまとめ、25年度までに著作として刊行するべく考察を進める。今後は比較研究が大きな課題となる。調査先との連携を深め、詳細な実施計画を立てる。イギリスではロンドンだけでなく各地方のチャイルドライン実施状況を調べ、地域密着型の利点と課題を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の「次年度使用額」は、24年度と順番が入れ替わった理論研究の図書の購入、および代表者の所属先変更に伴い、新たに必要となった機器(パソコン、プリンタ)の購入にあてる。24年度の研究費としては、代表者の所属先変更に伴い、インタビュー調査の交通費が大幅に削減できるため、インタビュー対象者の数を拡充する。また、比較研究での調査を対象地域を拡充して行う。なお、海外での調査可能時期が、新たな所属先の業務事情により航空費の高騰する時期に相当することとなり、従来の予算では不足するため、ここにも予算を拡充してあてることとする。その他、文献、インタビュー協力の謝金、テープ起こしの費用、および学会参加等のために、申し込み段階での計画通り研究費を使用する予定である。
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