2013 Fiscal Year Annual Research Report
アイルランド公教育制度の成立過程とその影響に関する歴史的研究
Project/Area Number |
23730754
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (10598105)
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Keywords | アイルランド / 公教育 / 教育史 / 任意団体 |
Research Abstract |
最終年度に実施した研究の成果:最終年度は、前々年度、前年度の研究成果を踏まえ、実証研究の遂行に着手した。具体的には、2013年9月8日~15日に海外出張を行い、補完的な史料調査および研究助言を受け、これを踏まえて、2013年11月財団法人史学会大会において報告を行った。報告した「反悪徳キリスト教知識儀礼普及協会」は、これまで内外においてほとんどその活動や公費補助の経緯が明らかにされてこなかった団体であり、アイルランド公教育制度の歴史的展開を考えるうえで重要な貢献を為し得たと信じる。これが、最終年度の基本的な研究成果である。その他の成果としては、前年度までに行った第二次文献の整理やオーバーヴューの成果を踏まえて、イングランドの教育振興任意団体とアイルランドのそれの比較を試みた論文の執筆や学会・研究会報告を行った。(『福祉国家と教育』(昭和堂、2013年)、歴史と人間研究会(2014年1月)、比較教育社会史研究会(2014年3月))。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果:全体の研究成果は、(1)アイルランド公教育の成立に関するヒストリオグラフィー、(2)アイルランド公教育とイングランド公教育の比較史研究、(3)「反悪徳キリスト教知識儀礼普及協会」に関する実証研究の三つである。1830年代までのアイルランド公教育に関する現在までの研究の到達点や大まかな比較の枠組みは、複数の論文によって明らかにされたと考える。これに対して、実証研究は一任意団体の関する学会報告のみに留まったが、この団体への国庫補助のプロセスの解明は、19世紀初頭においてすでに任意団体、国教会と国家の関係が、よりリベラルなものへと変容していたことを示す興味深い事例であり、従来の通説を部分的に修正する意義を持つと考える。
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