2012 Fiscal Year Research-status Report
日豪比較を通した開発教育における教育評価の方法論の構築と教育評価実践の探究
Project/Area Number |
23730755
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
木村 裕 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (90551375)
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Keywords | 開発教育 / グローバル教育 / 教育評価 / 授業研究 / 教育方法学 / オーストラリア / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、オーストラリアにおける開発教育の研究蓄積を批判的に検討することによって、開発教育における教育評価の方法論を構築するとともに、日豪での授業研究を通して教育評価実践のあり方を探究することを目的としている。平成24年度の主な研究成果は、以下の3つにまとめられる。 1つ目は、教育評価の方法論を、具体的な実践の分析を通して検討した点である。具体的には、研究協力者の1人であるセキュロ(Securo, L.)氏の実践について、昨年度までの研究成果を整理し直し、論文にまとめた。これにより、学習者の学習の成果と課題を把握するための評価課題と評価方法の設定の論理を明らかにした。 2つ目は、元タスマニア大学のブロウェット(Browett, J.)氏へのインタビュー調査と関連資料の収集である。タスマニア大学所属時にグローバル教育に関する教育評価やカリキュラム編成、教材開発などに積極的に取り組んできたブロウェット氏は、現在、ポルトガルの学校において、グローバル教育の視点を位置づけた学校全体のカリキュラム改革や教育評価の実施に取り組んでいる。今年度は、ブロウェット氏の学校を訪れ、その取り組みに対する考え方や取り組みの実態を調査した。 3つ目は、国内での授業研究の進展である。小中学校の教員や研究者と昨年度に設立した研究会において、これまでに検討してきた教育目標設定の論理、教育評価の方法論、および実践の分析枠組みをふまえながら、単元開発・授業づくり・教材開発に取り組んできた。また、そこでの取り組みをふまえて、オーストラリアの教師とも実践の可能性を探ってきた。 次年度は、これらの成果に基づいて授業研究を継続し、実践のあり方の探究と、実践をふまえた理論の再構築を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、研究の目的を達成するために、①オーストラリアの研究蓄積の批判的検討を通して、学習者の学習の成果と課題を把握するための評価課題と評価方法の設定の論理を明らかにし、②理論に基づく評価課題と評価方法を日豪それぞれの現場の教師とともに開発し、実践を通して改善することによって、③教育評価実践のあり方を探究するとともに、方法論の精緻化を図ることをめざしている。 昨年度までの研究を通して明らかにしてきた評価課題と評価方法の設定の論理をふまえて、今年度は、交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿った実践研究を進めてきた。具体的には、日本での実践事例を検討するとともに、理論に基づく単元設計および評価課題と評価方法の開発を進めてきた。また、ブロウェット氏の転勤に伴って昨年度に実施することのできなかったインタビュー調査を実施できたことも、研究を進めるうえで重要な成果であった。 ただし、ブロウェット氏へのインタビュー調査を今年度に実施したことや、設立した研究会において単元開発および教材開発に力を入れたことから、当初予定していた、実践およびその成果をもとにした評価課題と評価方法の有効性および実践上の課題の整理まで行うことができなかった。これらについては、実施の見通しは立てられているため、次年度に取り組んでいく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、主として実践研究を行う。具体的には、まず、今年度取り組む予定であった学校現場での実践およびその成果をもとにした評価課題と評価方法の有効性および実践上の課題の整理を行う。次に、その成果をふまえ、実践に基づいて理論の有効性と課題を明らかにするとともに、課題を乗り越える方途を検討する。続いて、研究会に所属する教師たちとともに、再び単元設計および評価課題と評価方法の開発を行い、実践していただく。そしてその実践をもとにして、評価課題と評価方法の有効性および実践上の課題を再検討する。以上の作業を通して、教育評価の方法論の精緻化を図る。 また、学会や研究会において、それまでの研究成果の報告を行う。これにより、これまでに構築してきた教育評価の方法論の意義と課題についてより多角的な視点から示唆を得ることができ、理論の精緻化を進めることができると考えられる。 平成26年度は、それまでの研究成果をもとに、開発教育における教育評価の方法論を精緻化するとともに、評価課題と評価方法の具体的な提案を軸とした教育評価実践のあり方をまとめる。また、まとめた成果を学会発表や研究会などを通じて発信していく。さらに、今年度に実施した日本での実践事例の検討を継続することで、日本の学校現場で効果的かつ豊かな実践を行うための可能性と課題に関する知見を蓄積していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はオーストラリアにおける授業研究を行うことができなかったため研究費に未使用額が生じたが、次年度に行う予定の研究計画と併せて、今年度実施予定であった調査も実施する。「今後の研究の推進方策」に示した通り、今年度も日豪での授業研究が主となる。そのため、書籍を中心とした資料の購入と国内旅費・外国旅費に、研究費の大半を充てる予定である。
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Research Products
(6 results)