2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の教員養成における一般教養の位置づけに関する歴史的研究
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23730764
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山崎 奈々絵 東海大学, 課程資格教育センター, 助教 (90598103)
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Keywords | 教員養成 / 戦後教育改革 / 一般教養 |
Research Abstract |
本研究の目的は、第二次世界大戦後初期の教員養成改革について、一般教養を重視するという理念が、教員養成大学・学部の実態において実質を伴っていなかったことを明らかにすることである。この目的を達成するために、2013年度は主として次の3種類の資料の調査・収集を行った。すなわち、1)埼玉大学に関する資料、2)静岡大学に関する資料、3)当時文部省において教員養成改革を推進した玖村敏雄が所蔵していた資料(現在は山口県立山口図書館所蔵)である。これらのうち、特に1)と2)は、先行研究(大学沿革史を含む)でほとんど用いられてこなかった新しい資料である。なお、1)~3)の詳細は次の通りである。 1)の資料には、授業や教育実習の記録などが含まれる。こうした資料によって、教員養成が戦前から戦後へ連続した面や非連続となった面などを、カリキュラムのレベルから浮き彫りにできると考えられる。 2)の資料には、戦前の教員免許状から戦後の免許状へ切り替える実態や師範学校・青年師範学校の教官組織が新制大学で再編されていく過程、類似した科目を担当する文理学部と教育学部の教官組織の編成などについて、静岡大学の実態に即して明らかにできる資料が含まれる。ただし、文字が消えかけているなど非常に劣化している資料も多い。そのため、まずは資料を読める状態にし、詳細な分析が今後の課題である。 3)はすなわち、玖村文庫の未整理資料である。玖村が文部省にいた頃に作成・収集・利用した資料のほか、文部省から山口大学や福岡学芸大学(現在は福岡教育大学)に移った後に作成・収集・利用した資料などが含まれている。こうした資料は先行研究でも部分的に用いられてきた一方、いつ、どこで、何のために作成・収集・利用されたのかすぐにはわからないような資料も多い。そのため、まずは各資料の性格などを明らかにすることが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度までに複数の教員養成大学・学部を対象に、教員養成の実態であるカリキュラムや教官組織の再編過程を明らかにできるような資料の調査・収集を進めてきた。また、関連資料の調査・収集及び購入を進めてきた。こうした資料の調査・収集等は、申請当初の計画以上に進展している。そして、これらの資料に即して、本研究は、各大学・学部の個別具体的な実態に即しつつ、教員養成大学・学部がおおよそ共通して、発足当初から教養教育を軽視していたことやその要因を明らかにしてきた。 このように、各大学・学部の実態に即した日本側の資料について、申請当初の計画以上に発掘できている。ただし、それゆえに占領軍文書の調査・収集については後回しにせざるをえず、計画通りには進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である2014年度は、研究の総括を行う。そのために、今まで収集した資料を中心に、その分析を進める。あわせて関連資料の収集・購入を進める。 具体的に2014年度に進めることとして特に次の2点が挙げられる。 1)2013年度に収集した資料の整理と分析を進める。 2)1)の資料と2012年度以前に収集した資料について、とくにカリキュラムのレベルから、教員養成における一般教養の位置づけとその意義について明らかにする。 以上のことを通じて、本研究の総括を行うと同時に、今後に連続する研究課題を新たに示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた出張を他の業務の都合により急遽キャンセルせざるを得なくなったため。 必要な資料の調査・収集及び購入に充てる。
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