2012 Fiscal Year Annual Research Report
ロンドンのアウトリーチ型成人教育におけるカリキュラム開発史の研究
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23730767
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
関 直規 東洋大学, 文学部, 准教授 (50405106)
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Keywords | 社会教育 / 夜間継続学校 / 成人学校 / 夜間教育 / ウィメンズ・インスティテュート / 女性教育 / 無償インスティテュート / 有償インスティテュート |
Research Abstract |
本研究は、イギリス現地における一次資料の調査・発掘に基づき、ロンドン教育当局を担い手とするアウトリーチ型成人教育の成立と特質について、カリキュラム開発史の視点から明らかにすることを目的としている。最終年度は、成人教育活動の土台を提供した前世紀転換期のロンドン学務委員会による成人学校の現場の取り組みを解明するとともに、ロンドン・カウンティ・カウンシルの代表的な成人教育機関の一つとして、1913年に開校したウィメンズ・インスティテュートのカリキュラム開発とそれを支えた論理を明らかにした。 ロンドン学務委員会は、夜間継続学校に成人が入学する配慮が不足していたことや、年齢別の教育活動に対するニーズがあったこと等から、成人に限定した夜間教育を提案する。1897年、最初の成人学校である、18歳以上の女性を対象としたアンコーナ通り校が開校した。この成功を受けて、量的拡大が進むが、地域や市民の要望に応えつつ、教育内容は広範囲に及び、成人の多様な背景をふまえた実践が行われていた。 そうした蓄積をベースに、ウィメンズ・インスティテュートは、ロンドン全域に普及する。大都市内部の地域的特性を反映し、有償タイプの郊外型、混合地区型及び都心型、無償タイプの貧困地区型の四つに分類することができた。女性の変化に富んだ生活様式との動態関係や地域の多様性に柔軟に応じながら、多面的発展を遂げたのである。 前年度に分析したメンズ・インスティテュートを含めて、ロンドンのアウトリーチ型成人教育は、大都市の過酷な労働・生活環境がもたらす人間疎外を克服し、コミュニティを構築する上で、重要な役割を果たしていたことがわかった。
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