2011 Fiscal Year Research-status Report
ポスト近代における「自律」と「啓蒙」の再評価―フロイト社会思想の教育学的検討―
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23730769
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下司 晶 日本大学, 文理学部, 准教授 (00401787)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育学 / 教育哲学 / 教育思想史 |
Research Abstract |
わが国では、教育哲学・教育思想研究が「目指すべき教育像」を語りにくくなって久しい。その一因は、1990年代以後の日本の教育学が、ポストモダン思想(ポストモダニズム)の影響を受けたことがあげられる。ではしかし、ポスト近代社会と呼ばれる現代において、ポストモダン思潮のインパクトを踏まえつつ、あるべき未来の教育像を描くことは出来ないのだろうか。 本研究は以上の課題意識から、ポスト近代社会において目指すべき教育像を、個人の人間形成と社会集団のあり方の両面から提示するために、フロイトの社会思想を教育学的に検討するものである。 2011年度の研究は、3年計画のうちの初年度として、基礎的作業を行った。 まず、フロイト理論および精神分析思想の教育学的含意を、「啓蒙」概念を中心に検討した(日本教育学会『教育学雑誌』研究ノート・査読有)。その上で、教育思想史研究の方法論に関して、「言語論的転回」以後の歴史学の成果を踏まえた提言を行った(教育思想史学会『近代教育フォーラム』掲載論文・査読有)。さらに、「甘え」理論に代表される日本的人間形成論について、教育学におけるポストモダン思想(ポストモダニズム)受容と、ポストコロニアリズムの視点を取り上げながら検討した(教育思想史学会『近代教育フォーラム』掲載、共著論文)。以上が論文等の成果である。 次に、学会発表では、ポスト近代社会において、「自律」という近代教育の理念を継承すべきか否か、継承するとすればいかなる形において継承すべきかに関して、教育学的「自律」概念の検討を行った(教育思想史学会コロキウム発表)。 次年度以降、以上の成果を踏まえて、さらなる研鑽に励みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調である。 教育思想史学会『近代教育フォーラム』掲載単著論文(査読有)1本、教育思想史学会『近代教育フォーラム』掲載共著論文1本、日本大学教育学会『教育学雑誌』掲載の「研究ノート」1本(査読有)が、論文等の成果である。 (なお、厳密にいえば本課題以前の研究が当該年度に発表されたものではあるが、上記以外に、教育哲学会『教育哲学研究』に共著論文(査読有り)を1本発表している。) 学会発表としては、教育思想史学会コロキウム発表(共同)を1件行った。 次年度以降、以上の成果を踏まえて、さらなる研鑽に励みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究はポストモダン思想(ポストモダニズム)と、思想史の方法論に関するものが中心だった。 次年度以降は、これを踏まえて新たな研究を行いたい。 具体的には、精神分析思想や心理学理論についても積極的に検討していきたい。 研究成果は、学術雑誌と平行して、市販の学術書にも発表していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接の研究資料である書籍、それらの資料を整理するためのパソコンや関連機材、研究資料の収集と成果発表のための旅費を中心とする予定である。
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Research Products
(7 results)