2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト近代における「自律」と「啓蒙」の再評価―フロイト社会思想の教育学的検討―
Project/Area Number |
23730769
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下司 晶 日本大学, 文理学部, 准教授 (00401787)
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Keywords | 教育学 / 教育哲学 / 教育思想史 |
Research Abstract |
1990年代にポストモダン思想を受容したことによって、近年の教育学では、理想や理念が語りにくい状況にある。ポストモダン思想によって教育学は、多元的価値を認める方向へと転換した。しかしその副産物として、価値相対主義によって教育目的は空洞化し、シニシズムももたらしたといわれる。そこで本研究では、ポスト近代社会において目指すべき教育のあり方を、個人の人間形成と、社会集団のあり方の両面から提示することを目的とする。 2012年度の研究成果は、以下の通りである。①規範の問題と関連づけて、教育学における「発達」概念を検討した。特に、心理学は規範科学であり得るかという問題を中心的な問いとして、戦後教育学による発達心理学の受容と、その規範化の問題を問い直した。その成果は研究会にて発表した後に、学術書に寄稿した(森田尚人・森田伸子編編『教育思想史で読む現代教育』勁草書房, 所収)。②教育学において、しばしば教育目標として語られる「自律」の概念を再検討した。その成果は共著論文の形で学会誌にて発表した(教育思想史学会『近代教育フォーラム』第21号所収)。③教育学における規範の喪失という点に関して、これを教育哲学のポストモダニズム受容の観点から検討した。その成果は学会誌にて発表した(教育哲学会『教育哲学研究』第106号所収)。④上記研究で検討してきた理論的課題を大学における教員養成という場に置き直し、中央教育審議会で提示された教員の「実践的指導力」向上の方策に即して検討した。その成果は学内学会シンポジウムで発表した後に、同学会誌に投稿した(日本大学教育学会『教育学雑誌』第48号所収)。 以上、2012年度の研究成果は、学術書への論文投稿1本、全国学会誌への論文掲載2本(単著1、共著1)、学内学会誌への論文掲載1本がその中心であるが、他に書評等の業績もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調である。 2012年度の研究成果は、学術書への論文投稿1本(森田尚人・森田伸子編編『教育思想史で読む現代教育』勁草書房)、全国学会誌への論文掲載2本(教育哲学会『教育哲学研究』、教育思想史学会『近代教育フォーラム』)、学内学会誌への論文掲載1本(日本大学教育学会『教育学雑誌』)がその中心である。またそれに加え、書評も執筆した(日本大学教育学会『教育学雑誌』)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは「自律」と「啓蒙」の概念と、教育学におけるポストモダニズム受容を中心に研究を進めてきたが、これらを広い意味での教育における「規範」の問題としてとらえ直し、さらに理論-実践問題とも関連づけて研究していく予定である。研究成果は学会での発表、学術雑誌への投稿を中心に、市販の学術書も視野に入れたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究資料(書籍等)の購入を中心に、それらの資料を整理するためのパソコンや関連機材、研究資料の収集と研究成果発表のための旅費を中心とする予定である。
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Research Products
(10 results)