2011 Fiscal Year Research-status Report
日中の幼稚園の成立と展開に関する比較史研究-母親の位置づけを主要な視点として-
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23730780
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Research Institution | ARIAKE College of Education and the Arts |
Principal Investigator |
日暮 トモ子 有明教育芸術短期大学, その他部局等, 准教授 (70564904)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 幼稚園 / フレーベル / モンテッソーリ / 母親 / 倉橋惣三 / 陳鶴琴 |
Research Abstract |
・本研究は幼稚園の成立と展開の過程を、母親の役割や位置づけを主たる視点に置き、我が国と中国の状況と比較することを通じて、我が国の幼稚園制度の特徴の一端を明らかにするものである。両国はいずれも海外から幼稚園が移入された経緯を持つ。その過程で母親の教育的役割がどのように論じられていたのかを比較することを試みている。・平成23年度は、日本の明治期における幼稚園論に関する史資料収集と中国の清朝末期~民国初期における幼稚園論に関する史資料収集を中心に行った。国内調査は平成23年12月に実施(国会図書館、大学図書館等)し、海外調査は平成23年9月及び平成24年3月に、中国及び台湾(国家図書館、国際シンポジウムへ参加等)で実施した。史資料収集とともに、国内外において専門家(国内の幼児教育史研究者、及び海外の研究者等)との情報交換も合わせて行った。・海外調査(平成24年9月)の一環で実施した幼児教育研究者からのインタビュー等によれば、戦前の中国では日本に比べ、モンテッソーリの教育法に対する関心はそれほど高くはなく、戦後の80年代~90年代にかけて広く知られるようになった状況がある。今日の広まりとともに、戦前の中国のモンテッソーリ教育法の受容の在り方について史料に基づき実証していくことが今後の課題となっている。また、当時、フレーベルの恩物とモンテッソーリの教具が中国で矛盾なく認識され受容されていたかという点については、恩物と教具が中国に紹介された時期の違いのみを指摘する先行研究が大半で、判然としないところがあった。この点についても実証的に検討していくことが課題となっている。・このほか、本研究に関連する研究として、平成23年度は現行の日中両国の就学前教育・保育システムについて検討を行った。多様化する保護者のニーズに対応するかたちで就学前教育・保育の形態が変化している実態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平成23年度は国内外での史資料収集を中心に行い、多くの史資料を収集することができた。・しかし、収集の時期が年末から年度の終わりの時期となってしまったことから、収集した資料の分析を進めるための時間を十分に確保できなかった点を反省している。平成24年度は史資料の分析を進めることに重点を置き、日本と中国における幼稚園の成立過程及び展開過程の時期にみられる特徴を両国の比較を通じて明らかにすることを目指したい。・なお、平成23年度に実施した海外調査において、研究領域の近い教育研究者とのネットワークを新たに築くことができた。また、台湾で平成24年3月に行われた国際シンポジウムに参加したことより、中国だけでなく、台湾や香港の教育研究者と情報交換をする機会を得た。こうした研究者の情報交換やネットワークの拡充は、今後本研究をスムーズに進めていくことに繋がると考える。・また、就学前教育について、歴史的視点からだけでなく、現在の日本の保育・子育て支援システムの実態に関する研究も合わせて行った。さらに、現在の中国の就学前の保育と小学校の教育の接続・連携の実態についても、連携研究者として調査を行い、その結果を論文としてまとめた。これらの研究は、本研究に広がりと奥行きを持たせることになったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成24年度は、前年度に収集した史資料の分析を進め、その成果を発表していくことが中心となる。平成23年度は資料収集に時間を要したため、収集した資料の分析を十分に進めることができなかった。そのため、平成24年度は史資料の分析を進めるとともに、その成果を早い段階で発表する機会を設けるように努める。・具体的には、学会等での発表内容を、幼稚園の成立期と展開期の時期に分けて行い、その成果を論文としてまとめ、学会誌等に発表することを行うようにする(2本以上の論文投稿を予定)。研究の成果を蓄積しつつ、最終年度に本研究の成果としてのまとめを行えるような体制づくりを早めに整えるようにする。・今後の研究をスムーズに進めるための方策の一つとして、国内外で調査を行う場合、早めに調査計画を立てることが考えられる。前年度は、初年度の調査ということもあり、調査計画を立案することが遅れ、その分、実施時期が遅れた。この反省を踏まえ、今後は年度の早い時期に国内外の調査を実施し、収集した資料の分析・検討を十分に行える時間を確保するようにする。平成24年度は9月までに国内外の調査を終えるようにし、本研究の後半にあたる平成24年9月以降は、研究成果をまとめることに専念したい。・平成23年度に築いた研究ネットワークを十分に活用して情報交換を行い、研究の効率化を図るようにする。そのためにも、これまで本研究で蓄積してきた情報の共有を研究者間で行うようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・平成24年度は、資料の分析および研究成果の発表を行うことを主たる目的とする。また、これまで収集した史資料について、研究者間での共有化を図ることを行う予定である。前年度作成できなかった日中の幼稚園研究史に関する資料集の作成を行い(平成24年度内)、研究者間のネットワークをさらに広げてゆきたい。・より実証的な研究を行うために、国内外での史資料収集や専門家との情報交換を継続して実施する。前年度の反省から、国内調査は京都・国会図書館等を中心に平成24年7~8月に、海外調査は中国・北京及び上海の国家図書館等を中心に平成24年8~9月に実施するなど、前年度より調査時期を早めて設定し、実施する予定である。平成25年度は基本的には海外調査を予定しておらず、平成24年度内で海外調査を終えるようにする。そのため、平成24年度は比較的長期間(2週間程度)の調査日程を計画している。・最終年度の報告書(平成25年度3月末)の作成に向け、本研究の研究成果を、学会等での口頭発表(日本教育学会、日本保育学会、国際教育学会を予定)や、学会誌等(『国際教育』『保育学研究』『幼児教育史研究』等を予定)への論文投稿を行う計画を立てている。
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Research Products
(3 results)