2012 Fiscal Year Research-status Report
日中の幼稚園の成立と展開に関する比較史研究-母親の位置づけを主要な視点として-
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23730780
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Research Institution | ARIAKE College of Education and the Arts |
Principal Investigator |
日暮 トモ子 有明教育芸術短期大学, その他部局等, 准教授 (70564904)
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Keywords | 幼稚園 / フレーベル / モンテッソーリ / 母親 / 倉橋惣三 / 陳鶴琴 / 張雪門 |
Research Abstract |
・本研究は幼稚園の成立と展開の過程を、母親の役割や位置づけを主たる視点に置き、我が国と中国の状況と比較することを通じて、我が国の幼稚園制度の特徴の一端を明らかにすることを目的としている。両国が海外から幼稚園教育を移入した過程において、母親の教育的役割がどのように論じられていたのかを比較し検討することを課題としている。 ・平成24年度の前半は、日本のフレーベル、モンテッソーリ関連の書籍の収集を行った。後半は中国に長期間滞在し、フレーベル、モンテッソーリ関連の史資料収集、とくに当時の新聞や雑誌記事(『教育雑誌』『中華教育界』『新教育』など)を中心に収集した。また、陳鶴琴、張雪門など当時の幼児教育研究者の著作の収集を行った。 ・史資料の初歩的分析の結果、近代中国でフレーベルの恩物とモンテッソーリの教具は日本やアメリカを経由して導入された状況が明らかになった。また、当時恩物や教具については対立的に紹介されることもあるが、大半は相互補完的なものとして紹介されている傾向がみられることが明らかになった。 ・平成24年12月と平成25年3月には中国の大学および幼稚園(モンテッソーリ教育を導入している園を含む)を訪問し、研究者や保育者との意見交換を行った。平成25年3月には中国の大学において、日本の就学前教育の動向について報告する機会を得た。 ・研究者からのインタビューや海外調査の結果、今日の中国の幼稚園では、日本に比べ、フレーベルよりもモンテッソーリの教育法に対する関心が高い状況を知ることができた。モンテッソーリ教育法を実施している幼稚園は、その理論や方法的関心からよりもむしろ、園児募集対策など、商業的側面から同法を実施している面が強いように思われた。 ・本研究に関連する研究として、平成24年度は現在の日本の就学前教育・保育システムについて学会発表を行い、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平成24年度は国内外での史資料収集を中心に行い、多くの史資料を収集することができた。しかし、史資料の分析および検討を十分に行うことができず、昨年度と同様、今年度においても反省点となっている。次年度は本研究の最終年度になるため、史資料の分析・検討に重点を置き、日本と中国における幼稚園の成立過程および展開過程の時期にみられる特徴を両国の比較から明らかにし、成果として論文にまとめることに専念したい。 ・平成24年度の学会発表および現地調査において、日本および中国の研究者と意見交換や情報交換を行い、本研究の研究ネットワークを強化することができた。こうした研究者の情報交換やネットワークの拡充は、今後本研究をスムーズに進めていくことに繋がると考える。 ・本研究の実施の過程で、歴史的状況とともに、今日におけるフレーベルやモンテッソーリを実施している幼稚園についても現状を把握する必要があることを実感した。たとえば中国では、モンテッソーリ教育法については、1910~20年代と1980~90年代に2度の導入時期があった。日中両国の横の比較だけでなく、同一国における時間軸による縦の比較を行うことで、本研究に奥行きを持たせることができると考えている。今後の研究に追加していきたい。 ・本研究に関連する研究として、中国の現在の就学前教育政策を含む教育政策文書の翻訳を行った。また、今日の日本の就学前制度および子育て支援システムの実態に関する研究を行い、その結果を2本の論文としてまとめた。さらに、中国の大学において、日本の就学前教育の現状について報告を行った。 ・日本の現状の制度・システムの検討は進みつつあるものの、歴史的考察が不十分であるため、今後強化することにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成25年度は、これまで収集した史資料の分析を進め、その成果を発表していくことが中心となる。史資料の収集に時間を要したため、資料の分析・検討が十分に進めることができていない。そのため、平成25年度は史資料の分析を重点に行い、その成果を早い段階で発表する機会を設けるように努める。 ・具体的には、学会等での発表内容を、日中両国の幼稚園の成立期と展開期の時期に分けて行い、その成果を論文としてまとめ、学会誌等に発表することを行うようにする(2本以上の論文投稿を予定)。研究の成果を蓄積しつつ、本研究の成果のまとめを行うようにしたい。 ・今後の研究をスムーズに進めるための方策としては、早めに国内外での資料収集を終えることが不可欠であると考える。具体的には、不足している史資料を収集する調査を平成25年度前半で完了し、平成25年度後半は本研究の成果をまとめる作業に専念するようにしたい。 ・平成25年度度末には本研究の成果を報告書としてまとめることを予定しているため、その時間を確保するよう心がける。これまでの調査で築いた研究ネットワークを十分に活用して情報交換を行い、研究の効率化を図るようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・平成25年度は、これまで収集した史資料の分析・検討に重点を置くとともに、研究の成果を随時発表していくことを目的とする。当初史資料収集は平成24年度で終了させる予定だったが、不十分な点を補足するための史資料収集調査を平成25年度の前半で完了させるようにする。平成25年度の後半は、論文執筆および研究成果報告書作成のための時間に充てる。 ・平成25年度の史資料収集の調査は4~7月に中国で、8~9月に日本で行うようにする。海外調査は、平成25年4月~6月に北京の国家図書館および北京師範大学で、7月に上海図書館での史資料収集を行い、南京では南京師範大学や陳鶴琴が創設した南京鼓楼幼児園で研究者や保育者からインタビューを行う。さらに6~7月には中国モンテッソーリ協会が設置されている中国・青島で協会関係者や研究者からインタビューを実施する計画である。国内調査は京都・国会図書館等を中心に平成25年8~9月に実施する予定である。 ・研究成果報告書(平成25年3月末)の作成に向け、本研究の研究成果を学会や研究会等での口頭発表(日本教育学会、日本保育学会、アジア教育学会を予定)や、学会誌等(大学紀要、『国際教育』、『保育学研究』、『幼児教育史研究』等を予定)への論文投稿を行う計画を立てている。 ・研究者間の情報共有および研究ネットワーク構築のために、本研究の成果報告書の作成、配布、さらに、データベース化を平成25年度末に行う予定である。
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Research Products
(4 results)