2012 Fiscal Year Annual Research Report
新制師範学校の制度的意義に関する実証的研究―高等教育機関の採用基準に着目して―
Project/Area Number |
23730783
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小田 義隆 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (50455094)
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Keywords | 師範学校専門学校程度昇格 / 高等教育機関 / 教員人事 / 履歴書 / 教官採用 / 任用内協議 |
Research Abstract |
本研究の目的は、師範教育令改正(S18)により専門学校程度に昇格した新制師範学校が高等教育として確立していたこと採用人事資料を使って実証することである。その方法として、昇格過程で文部省に提出した新制師範学校教員の採用書類(履歴書2309名)と、本研究で新たに収集した、中等教員養成を担ってきた高等教育学校(専門学校)教員の履歴書を比較分析する手法を用いた。 第一に、国立公文書館所蔵の第一次資料の収集を行った。代表的な資料「教官採用」で、旧制高等学校をはじめ、奈良女子高等師範学校等の履歴書(355人分)を収集し、マイクロフィッシュ化を行った。これらの資料群と、新制師範学校の採用時に提出された履歴書を比較分析することにより、専門学校と専門学校程度の相違が明らかになった。両者の人事を取り扱う機関は、高等教育学校が専門学務局および普通学務局に対して、新制師範学校は国民教育局という決定的な違いはあるが、教員採用の基準としては教歴によって職階を決めるという共通の特徴が見られた。高等教育機関卒業見込みの若手の教員に関しては、助教授に採用される所などは新制師範学校と同様な特徴が見られた。さらに、採用までの経歴に関しては、中等教育の教諭を経た後に採用されるケースも多々見られた。 また、同じ師範教育の系譜である女子高等師範学校人事に関しては、新制師範学校の教員と同様に師範学校卒業後高等師範学校、文理科大学を経て採用されているケースも多く、新制師範学校採用人事との差異が見られなかった。 以上の分析により、新制師範学校の採用人事は、既存の高等教育機関と比較しても提出履歴書の内容に関して遜色なく、同質の特徴が見られることから、S18年に師範学校の高等教育機関における位置付けが確立されており、高等教育による教員養成の戦前・戦後の連続性を教員の人事の面から実証できたと考える。
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