2012 Fiscal Year Research-status Report
多文化国家オーストラリアにおける教育基準・内容の統一化とその受容に関する研究
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23730785
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 麻衣子 北海道大学, 留学生センター, 講師 (10545627)
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Keywords | 教育学 / 教育基準 / ナショナル・カリキュラム / 全国学力調査 / オーストラリアの教育 |
Research Abstract |
本研究は、オーストラリアで現在推進されている「統一性」を指向する学校教育改革の政策的背景と、それに対する各州の対応の「ちがい」とを明らかにすることを目的とする。具体的には、全国学力調査の推進と、それにより必要とされるに至ったナショナル・カリキュラムの開発という連動する二つの取り組みに焦点を当て、多文化・多言語社会であり、初等中等教育の責任を各州が持つ同国で、教育基準・内容の「統一化」がどのように進められ、受容されているのかを検討する。 平成24年度は、前年度に引き続き、先行研究の研究を進めるとともに、前年度入手した資料・情報や公開資料等から、改革動向を追跡し整理・分析した。2008年以降段階的に開発・導入が進められているナショナル・カリキュラムは、2012年度から1年間の試行期間を経て2013年度より英語、算数・数学、科学、歴史の四領域で導入・実施されている。前年度の成果をもとに、日本比較教育学会第48回大会(6月,九州大学)では、ナショナル・カリキュラムの構造と特徴とを整理し提示するとともに、各州における導入・調整・実施状況について報告した。また、アジア比較教育学会(7月,タイChulalongkorn University)では、特に英語リテラシーに注目し、それがナショナル・カリキュラムでどのような位置づけにあるのかを、全国学力調査の影響とともに分析し、報告した。 当初の予定では、平成24年度以降は、オーストラリア全州の教育省および教員組合をまわり改革の影響を把握・分析することを予定していたが、開発中の取り組みについての情報を収集することが困難であったため、連邦政府段階の動向とともにニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州に焦点を絞り州段階の対応を整理するとともに、学校段階での導入状況・反応について調査することとした。そのため、8月と2月に各1週間ほど現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、当初研究計画に記載した内容を変更し調査研究を進めたが、研究目的の遂行にあたっては、むしろ必要な変更であったと認識している。当初は、全国学力調査の推進とナショナル・カリキュラムの開発・導入という連動する二つの取り組みが各州でどのように受け止められ、実施に移されているのか把握するため、全州の教育省および教員組合等関係機関を訪問し、資料収集・聞き取り調査を行うことを予定していた。しかし、開発中の取り組みについては、時にその扱いについて配慮を要することから、全州を対象に情報収集を行うことは困難であった。そのため、対象とする州を限定し、しかし一方で学校段階での導入状況・反応まで掘り下げて調査することにより、学校教育改革がどの程度現場レベルにまで浸透しているのかを明らかにすることを試みた。 平成24年度は、8月22日~9月1日の期間で、シドニー、アデレード、ブリスベンを訪問し、各州教育省・審議会、学校およびオーストラリア・ティーチング・スクールリーダーシップ機構(Australian Institute of Teaching and School Leadership:AITSL)を訪問し、関係資料・情報の収集を行った。また、2月24日~3月3日には、シドニーおよびブリスベンを訪問し、各州教育省、学校およびオーストラリア・カリキュラム評価機構(Australian Curriculum, Reporting and Assessment Authority:ACARA)を訪問し、調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23・24年度に引き続き先行研究の研究、政策動向の整理・分析を行うとともに、これまでの成果を土台として、「統一性」を指向する学校教育改革への各州・地域・学校での対応・受容状況を具体的に調査・検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・平成24年度の旅費清算を平成25年度に行う。 ・平成24年度の旅費として考えていた経費が、当初の予定より節約できたため、平成25年度に、書籍購入および旅費としてあてる。 なお、平成25年度の経費については、以下を予定している。 ・旅費―引き続き、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州教育省・教育審議会および関係機関を訪問し関連資料・情報を入手する。引き続き学校も訪問する。また、クイーンズランド州に関しては、これまでの研究の継続性から、遠隔地トレス海峡島嶼地域の教育事務所、学校を訪問し、学校改革動向について聞き取り調査および見学等行う。(可能であれば9月・2~3月の2回) ・物品―図書・資料購入とPC購入を予定している。
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Research Products
(2 results)