2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730786
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
若園 雄志郎 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 博士研究員 (90573668)
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Keywords | 博物館 / 多文化教育 / アイヌ / 図録 |
Research Abstract |
前年度に網羅的収集を行ったものを踏まえ、平成24年度はそれらの内容について分析を行った。 1997年から2011年までのアイヌ関連の特別展は239件、図録や博物館の年報などで内容について確認できたのは123件である。テーマを大別すると「社会(近代以前)」58件(47%)、「社会(現代)」31件(25%)、「美術」34件(28%)の3つに分類することが可能である。 「社会(近代以前)」が「社会(現代)」と比較して収集対象となる年代が広いことを考えれば、「社会(現代)」が4分の1を占めることは博物館において現代も重視されているということができるように思える。しかしながら、「社会(現代)」の31件のうち平取町立二風谷アイヌ文化博物館・北海道開拓記念館・大阪人権博物館の各主催で半数以上を占めており、主催者に偏りが見られる。そのほとんどは現代作家による伝統工芸作品の展示及び解説であり、現代の社会に対する問題提起となっているのは12件と非常に限られているということができる。ただし、「社会(現代)」のその他の展示であっても図録などにおいて現代社会に対する問題提起を行っている論考や解説はあった。 このように「社会(近代以前)」「美術」が特別展テーマとなる背景としては、やはり現代に関する展示の難しさが表れているということができるだろう。その理由としては資料の絶対的な数が異なること、「社会(近代以前)」「美術」であれば歴史的・美術的価値の評価や研究が現代と比較して多く行われているために一般への教育普及活動がしやすいことが挙げられるが、最も大きいと考えられるのは、アイヌ民族に関する法律が文化の振興に関するもののみであるように、「伝統的文化」に関する展示であれば議論は研究レベルのものとなり、一般的には「無難」であるとされているためではないかと考えられる。
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