2011 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生と多文化教育の可能性――フランスの地域語・バイリンガル学校を例に
Project/Area Number |
23730793
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松井 真之介 神戸大学, その他の研究科, 学術推進研究員 (70533462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイノリティ / バイリンガル学校 / 地域言語、移民言語 / ブレイス語(ブルトン語) / アルメニア / ディワン / エウスカディ語(バスク語) / イカシトラ |
Research Abstract |
平成23年度は地域言語学校の事例調査として、ブレイス(ブルトン)語のディワン学校複数とブレイス語保護に関わる諸協会、エウスカディ(バスク)語のイカシトラ学校複数およびエウスカディ語保護に関わる諸協会のフィールドワークを行った。移民言語学校の事例調査としては、在仏アルメニア学校5校のフィールドワークを行った。当該年度の主な研究目的は、それらの学校を比較し、運営に関する共通点を抽出することであった。そしてそこから、コミュノタリスムを想起させるバイリンガル学校とコミュノタリスムを忌避しようとする社会の関係、特に国民教育省や地域行政との関係を検討分析した。この視点は、往々にしてバイリンガル言語によるバイリンガル学校の教育方法分析に傾きがちなこれまでの研究とは異なり、社会とバイリンガル言語学校の関係、特に学校が国家の理念や社会とどのように折り合いをつけながら運営されているかに焦点を当てた点に意義がある。地域言語学校と移民言語学校の比較分析では、今年度は特に学校運営の共通点について検討を行った。その結果、これらの学校は、早期教育という方法でそれぞれのマイノリティ言語を保存・維持することを目的としている学校というだけではなく、治安がよく、教育水準の高い一般の私立学校としての役割も社会(少なくとも保護者)から求められており、学校側もその要求に対して尽力していることを確認した。また、次年度の準備として、リヨン郊外デシーヌ市のムスリム学校ともコンタクトを取り、今後の調査協力を要請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の記述通りに進展しており、次年度の準備段階まで済んでいる。ただ、当初のアラブ語=フランス語バイリンガル学校が見つけられていないのと(閉校した可能性が大)、23年度の調査によって発見した新たな問題の調査と分析のために、次年度にもう一度ブルターニュとバスクで調査を行う予定であるため、(2)の自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は継続してブレイス語とエウスカディ語とアルメニア語の学校を発展させて調査していく一方で、新たにムスリム学校とユダヤ学校、パリに存在する(おそらく)全日制ではないロシア語学校にも視点を広げ、調査を行う予定である。また、移民言語学校に関しては、その母語が故国の公用語になっていない集団に注視し、クルド人ディアスポラの母語維持活動について調査を始めようと計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の予算1,100,000円のうち、1,040,000円を海外調査旅費に使用し(9月と3月の2度の渡仏)、15,000円を外国語添削の謝礼、45,000円を書籍・資料購入代に使用する予定である。
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