2013 Fiscal Year Annual Research Report
初等教育における教育機会の不平等と学校教育の効果に関する研究
Project/Area Number |
23730796
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
川口 俊明 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (20551782)
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Keywords | 教育社会学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、次の二つである。一つは、保護者の経済的・文化的階層の違いによって、子どもたちのあいだに、どのような不平等が生じるのかを明らかにすることである。もう一つは、こうした教育の不平等を是正するために、学校教育に何ができるのかを探ることである。ここでは、おもに日本の小学校教育を念頭に置いている。 具体的には、九州の大都市であるA市の小学5年生(調査開始時=平成23年度)を調査対象とし、校区の立地条件が異なる複数の小学校において、(1)参与観察調査・インタビュー調査と、(2)児童・保護者・教員への質問紙調査を実施する。参与観察調査・インタビュー調査という質的調査法を用いて各学校現場の実態を描くと同時に、質問紙調査を用いてA市の教育と不平等の全体像を明らかにし、日本の「教育と不平等」を多角的に解明しようとする点に、本調査の意義がある。 平成23年度から25年度までの3年間の調査では、校区の立地条件が異なる3つの小学校(比較的恵まれた地域にある小学校、厳しい状況にある小学校、その中間の小学校)を対象に、参与観察調査・インタビュー調査・保護者や児童への質問紙調査を実施した。これらの調査では、(1)校区の社会経済的な状況が、教員の指導法に影響を与えること、(2)その対応関係は、ボールズとギンタスが提示した「対応理論(学校の構造や学校が生み出すものが、資本主義的な階級ニーズとほぼ対応している)」が示す状況ときわめて近いこと、(3)他方で、A市の小学校では、厳しい状況にある小学校に資源(とくに教員の配置)が割り当てられている他、最低限の基礎基本をすべての子どもに身につけさせる指導が徹底されるなど、「下に手厚い」体制が取られていること、などを明らかにした。
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