2011 Fiscal Year Research-status Report
大学教育における学習成果ベースの学生支援モデル構築に関する研究
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23730797
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小貫 有紀子 九州大学, 教育改革企画支援室, 特任助教 (30553416)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 米国 / 日本 / 高等教育 / 学習成果 / 学生支援 / 学生の成長 / モデル形成 |
Research Abstract |
本研究の目的は学士課程教育における学生の学習成果をベースにした学生支援活動のモデル形成である。本年度は、研究の基盤となる日米両国における学習成果議論の状況把握、そして学生支援活動の先駆事例の状況と課題について、文献・情報調査を中心に進めた。その結果、日本では学生支援活動についての議論が過去10年間で高まる中で、様々な取組が始まっており、特に学生の相互作用に着目した支援活動に注目が集まっていることが明らかとなった。そこで次に、学生の相互作用に着目したプログラムの導入背景、状況、課題等を明らかにするために、訪問調査を行った。特にピア・サポートや学生寮における教育的関与が近年盛んに取り組まれるようになっており、事例研究を行った結果、運営面での課題が明らかになるとともに、学生の学習成果や成長については、必要性は強く感じるものの、先行事例や研究が少ないことから、実践されていないことが明らかとなった。また、学生支援に関連した研究会やセミナー等にも積極的に参加し、情報収集を行うとともに、事例調査先やインタビュー依頼を行うために、各大学の実践者である教職員と交流を深め、本研究の内容について意見交換を数回行った。中でも我が国において学生の学習成果についての議論は、正課教育の枠組みでようやく始まった段階にあり、過去10年間において先駆的に学習成果アセスメントを導入している米国高等教育においても、学習成果の定義やアセスメントの手法は定まっているわけではないことが明らかとなった。そのため、「学習成果ベース」の意味づけと定義をより明らかにするために、学生の4年間の学生生活における学習成果に、学生支援活動がどのような影響を与えているのかを、掘り下げて研究していく必要がある。そこで、当初の予定には無かったが、学生の成長と学びを明らかにするために、学生インタビューを行うことにし、当年度は予備調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた米国調査は、震災やキャンパス移転の影響もあり、23年度中に実行することが叶わなかった。しかしその分、文献調査を十分進めることができた。また、当初の予定には無かったが、学生インタビューを開始することができたことは、本科研にとって非常に大きな意味がある。これまでの高等教育の分野における研究は、アンケート調査による量的調査が主であり、一人の学生の中で起きる学習や変容については、類型化されるに留まり、あまり明らかにされて来ていない。本研究では、学生支援のモデル形成という組織や制度を成果として想定しているが、今後は、よりモデルの意味づけとして大学教育における学生支援とは何かを、より具体的な4年間の学生生活を考慮して考えていく必要があるであろう。また、今年度は様々な機会を通じて、学生支援活動に従事する実践者の教職員と交流を持つことができ、研究内容に対する意見交換を含めて、その後の研究進展に大きく影響した。実践者自身も模索しながら経験を積み重ねていることが分かり、実践の基盤となる理論枠組みの必要性を強く感じた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、米国高等教育における先駆事例の調査を行うことで、学生支援における学習成果の全体像を明らかにしていく。それと共に、学生インタビューで得た知見をモデル形成に生かしていくために、米国の研究者と意見交換を進めていく。一方国内の状況については、先駆事例を収集することと同時並行して、一つ一つの事例について深く掘り下げた質的調査を実施していく。また、近年学士課程教育の質保証の枠組みにおいて、学習成果の議論が行われていることから、正課教育と学生支援の関係性を明らかにしていくために、資料、情報収集を進めていく。さらに、本科研の最終的な成果である、学習成果ベースの学生支援モデル構築に向けて、4年間の学生生活における学習成果に対する学生支援活動の影響を明らかにするために、学生インタビューとその分析を進めていくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、学生インタビューを今後も継続して進めていくとともに、インタビュー調査を通じた学生の学習成果に関する論文執筆を行う予定である。次年度の旅費はインタビュー調査および、事例集集を主に行っていく。なお、米国調査については、米国の研究者との意見交換を有意義なものとするために、学生インタビューの分析結果が出揃った段階で実行することとする。また、次年度は文献整理およびインタビューのデータテキスト化を支援を事業補助者に行ってもらう予定である。最後に、米国において学生支援の活動に関する基準枠組みが次年度、改定されるため、物品費として資料購入するとともに、学生支援活動および学習成果に関連する書籍、資料収集を引き続き行っていく。
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Research Products
(4 results)