2012 Fiscal Year Research-status Report
日韓の若者の職業教育現状と起業家精神の形成(若者の意識調査に基づき)
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23730803
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
尹 敬勲 流通経済大学, 法学部, 准教授 (80557629)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
世界的経済不況の中でも、日本は好景気に変わろうとしている。そのためか、若者の間では就職に対する前向きな話が交わされている。一方、韓国は、今までの円高の影響で日本の製造業が苦闘する中で得た好景気の時代から苦悩する時期に変ろうしている。 ここで若者の就職問題や雇用問題の本質を突き詰めると、問題の遠因は、若者の雇用が国とその国の生産活動を担う企業の業績が社会経済的変化によって自分の将来を預け、若者自らが働く場所を作り、国の経済を主導するような能動的行動をおこなさいということである。 韓国の若者に対してインタビューをする中で見えてきた問題は、多くの若者が大企業などへ就職が困難な場合、海外研修や大学院への進学するということで、就職をするのに必要な時間を猶予してもらえる期間として活用しているということである。これは、韓国の若者の就職に対する受動的意識を反映しているように思われる。韓国の場合、少なくとも大学入学段階で、大学を評価する基準が就職率であるため、大学生の意識は自らがどれぐらい就職できる確率が高いのかが判断材料となっている。実際、この部分を裏付けるために、2013年1月に出版した筆者の本『韓国の大学リストラと教育改革』の第3章と第6章には、大学が就職率にすべてをかけて生き残ろうとする韓国の大学教育の実態を分析し、受動的な態度で職業のことを考える韓国の大学生の実態を把握したのである。また、第7章には日本の若者の就職は、能動的な態度で就職のことを考えるか、考えていないのかの前に、基礎学力の欠落の問題がまず議論されるべきであるという分析している。実証的調査を実施し、大学教育の基礎学力の強化から就職に対する考えへどのように移行すべきなのかという問題を確認したのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日韓の若者の起業家精神を比較するという研究の一年目は、起業家精神に関する先行研究を検討した。先行研究は、ビジネスのアイデアをどのように実現していく方法論や経営者としての思考など、起業しようとする能動的な人が多く、そのような人々を対象とすることから始まる傾向があることを把握した。また、日本の若者の場合、筆者の『韓国の大学リストラと教育改革』でも分析しているように、起業家精神を形成する以前に社会で活動するうえで必要な基礎力が足りない。日本の若者の起業家精神を形成するために優先的に考えるべき課題は、韓国とは理由は違うとともに、既存の先行研究の流れとは少し異なることを確認することが重要であることを把握した。そのため、日韓の若者の起業家精神の研究には、既存の研究アプローチとは違う方法が必要であることを確認したのである。 そして、二年目には、韓国の若者に対しては、就職する上で必要な能力という「スペック」を獲得するために、どのような能力を形成しているのか把握した。主に彼らは、語学、専門関係の資格、ボランティアなど幅広い分野での能力を習得しているが、それをより能動的に活用せず、就職のためのエントリシートに記入するものとして活用している現状を把握した。今年は、実証的調査へ着手し、韓国の大学生の起業に対する問題意識を分析しようと考えている。また、日本においては中堅以下の大学であり、AO入試で学生募集を行う大学の場合、基礎学力が足りない大学生の現状を把握することで、起業家精神を形成することが難しい状況であることを明らかにした(『韓国の大学リストラと教育改革』)。ただし、今回は、韓国と日本において、大学生に対して起業家精神に関する実証的調査を実施し、異なる就職環境ではあるが、能動的態度で働く場所を求めていないという点では共通している両国の若者の起業家精神に関する調査を実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の研究は、日韓の若者の職業意識に関する実証的調査へ進めていく予定である。その質問項目は、これから少し変更はあると思うが、現時点でいえば、以下のように分析していく予定である。第一に、若者の能動的意識と受動的意識を把握する。起業家精神を形成する上で、能動的態度である。そのような心理的部分の尺度を図ることを計画している。第二に、若者が起業した上で必要となるのは、継続的な学びである。経営者であるゆえに、社会変化を先取る力が必要とされる。その意味で、若者の学習に対する意識調査の内容を入れる。第三に、企業とは社会の工器であるというマネジメントの思想に基づき、若者が単にお金稼ぐための起業ではなく、社会的使命を果たすための企業活動を行うことが要求されている。そのような視点から若者の社会貢献に対する関心度を図る。それは、いずれ、CSR活動への重視度と若者に最近注目されている社会的起業への実践の可能性を踏まえて、三つ目の調査項目として考えている。そして、このような質問項目を、調査者の様々な属性と関連づけて、相関関係を分析していこうと考えております。 調査分析が終わると、その次の段階として、『韓国の大学リストラと教育改革』の実証的分析の同様に、今までの研究実績を関連づけて、これから必要な日韓の若者の職業教育の方法を考えていく予定である。就職される側として受動的に労働市場で生きる道もあるが、自らが自分に合う労働の価値を発見するための教育を実施していこうと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画としては、日韓の若者の起業家精神に対する実証的調査を行う上で、各調査対象へのアンケート調査が必要となる。そのため、韓国のアンケート調査(質問項目が多いため面接調査の形式を採用する)のための渡航費と宿泊費などが必要とされる。また、質問調査の作成時の印刷費用と報告書作成時の印刷費用が考えられる。アンケートを実施する上で必要な事前調査と物品は前年度で購入しているので、必要とされない。 また、日本においても面接調査を実施する上で必要とされる交通費や経費、そして、前年度の業績でもある『韓国の大学リストラと教育改革』を発表する学会報告時の経費が必要と考えられる。 他には、調査結果の分析に必要な書籍の購入や資料のコピー、報告書の発送時の郵送費、事務用品購入費など様々な費用が発生すると思われる。その中で、やはり、韓国調査時の渡航費が最も大きな比重を占めると思われる。
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Research Products
(3 results)