2012 Fiscal Year Annual Research Report
具体的な改善例から見るIRによる学生の情報の効果的利用に関する研究
Project/Area Number |
23730807
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡田 聡志 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00581779)
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Keywords | Institutional Research / enrollment management / 学生支援 / 教育改善 / 分野別質保証 / 高等教育 |
Research Abstract |
本年度は,IRによる学生の情報のデータ収集・分析・改善の具体例の把握とモデル構築,および学生の情報の管理・運用の現状分析とIR導入の課題の検討について研究を進めるとともに,研究で得られた知見の整理とまとめを実施した。 本研究の知見の一つとして,IRの実践領域の課題として,学内の情報管理規定,個人情報保護管理規定,学内デジタルデバイドおよび学内の部局間における意識の差異等があることが明らかになった。情報管理規定等については,実際には現状の情報技術の進展を考慮せず,旧態依然とした規定で運用を行っている場合があり,このことがIR導入の障壁となっているケースが複数確認された。また,学内部局間の意識の差異については,専門領域個別の教育の課題やグローバル圧力,必要なデータの種類等の差異がその根底にあり,必ずしもIRに対する理解の不足等が要因ではないことが明らかになった。すなわち,機関のIRとして収集されるデータでは,必ずしも改善に有効なデータとは言えず,学内の統一的なシステムに入力される以前のデータをむしろ利用すべき状況が多いことが確認された。ここからは機関としてのIRに連携する分散配置型あるいはボトムアップ型のIRがモデルとして提示され得る。 また,海外先進事例の検討からは,既に岡田(2009,2011)で指摘している,機関としての個別機関と政府の中間に位置する中間組織の重要性に加え,専門分野としての中間組織の役割と機能の重要性が確認された。このことから,Clark(1983)が高等教育システムをマトリックス構造やLoose Webと表現したように,機関を縦軸とするならば,横軸としての専門領域の視点を,セクショナリズムに陥ることなくどのようにIRに反映していくかが課題であり,今後分野別質保証の観点からIRをいかに関連させていくかがわが国のIRを実質化していく上で重要と考えられる。
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