2011 Fiscal Year Research-status Report
戦後幼稚園教育成立期における幼稚園と小学校の接続に関する研究
Project/Area Number |
23730809
|
Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
石黒 万里子 中村学園大学, 教育学部, 講師 (90510595)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 幼小接続 / 幼稚園教育 / 保育要領 / 幼稚園教育要領 / 就学前教育 |
Research Abstract |
平成23年度は主に、以下の3点が研究実績として挙げられる。 第一に、イギリスの教育社会学者B.Bernsteinによる学校間移行の困難に関する指摘をふまえ、本研究における幼小接続についての理論枠組みの構築を行った。学校段階間の接続に関する先行研究では、これを歴史的・国際的に把握する理論枠組みが構築されているとは言い難い。同枠組みは、幼小接続の困難をカリキュラムと指導方法の点から把握しようとするものである。これについては、9月に国内の学会において発表した。 第二に、就学前教育(幼稚園、保育所、その他自発的な共同保育を含む)と就学後の学校教育の連携・接続に関する国内外の先行研究についてのレビューを行い、接続に関するタイプ分けを行った。主な比較対象としてイギリス・ドイツをとりあげたが、この研究からは、各国で就学前後の接続は教育制度上大きな課題となっているが、その実現の形については、就学前段階における学習目標の改訂や就学時期の変更など、様々な形がみてとれた。なお同比較研究成果については、1月に国外の学会において発表した。 第三に、第二次世界大戦後の学校教育成立期における幼稚園教育の内容・方法のあり方に関し、昭和23年保育要領、31年幼稚園教育要領発刊前後の時期について、小学校教育との関係について示した、1行政資料、2各幼稚園の沿革史、3保育雑誌等を分析した。 各幼稚園の沿革史には、保育要領・幼稚園教育要領の発刊が出来事として必ずしも記述されておらず、戦後幼稚園教育成立期において、幼稚園教育関係者が、幼稚園の学校教育化を大きな出来事として受け止めていたとは限らないことがうかがえた。この点は、現在の幼小の接続推進の動向においても示唆的であると考えられる。なおこの点については、平成24年5月に学会発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1B.Bernstein理論を手がかりに、学校間接続に関する理論枠組みを構築し、2日本で幼稚園が法制度上学校教育に組み込まれた第二次世界大戦後から、最初の幼稚園教育要領改訂(昭和39年)までの時期における、幼稚園と小学校の教育内容と指導方法について、両者の接続という観点から描き出すことを目的としている。 現在までのところ、1の理論枠組みの構築については終了し、かつ歴史資料の収集分析も進展している。また幼小接続について先進的研究を行う研究者からの協力も得られ、現在の幼小接続の動向についても情報収集することができている。 就学前教育においては、大きく分けて「就学準備の重視」と「幼児教育の固有性の尊重」という二つの理念がみられるが、国際比較を通してその実現形態について検討することができた。さらに当時の幼稚園関係者の、小学校への接続に関する意識について、歴史的文献を手掛かりに検討を進めている。 なお本研究の現在までの成果について、国際学会を含め二か所で発信することができ、さらに平成24年度5月にも発表予定である。研究計画として次に行うべきは幼小接続に関する個別の事例分析であるが、これについては次年度に行う予定である。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において収集した幼稚園の沿革史・記念誌は23園分である。今後はこれらの文献の検討をさらに深めると同時に、戦後幼稚園教育成立期における幼稚園の実際の動向をより包括的に把握するため、さらに多くの沿革史の収集を進める必要がある。また沿革史だけでなく、保育日誌などの保育記録を収集することで、当時の幼稚園教諭の具体的な意識に迫ることができると考えられる。したがってこれらの文献の収集検討を進める予定である。 これらの文献収集のために、地域の公立図書館、大学図書館などへの訪問を予定している。また先行研究を行う専門家への協力依頼も行っている。 今後はそうした個別の歴史的事例研究を進めるとともに、現在の幼小接続の動向として、先進的試みを行う自治体・幼稚園などへの訪問調査研究を予定している。これについては、研究協力者からの情報提供が得られる予定である。 またこれらの研究成果について、歴史研究と位置づけて公表を進めるとともに、現在の幼小接続の動向とも共通する理論枠組みを再構築することで、現代の動向に対する示唆も得られるようにする。 なおこれらの研究成果については、国内外の学会で発表を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究計画推進のため、調査・資料収集、成果発表のための旅費が主な用途となる。訪問先としては、東京、京都、福岡県内を予定している。 また研究成果の発信のため、国内外の学会での発表を行う。具体的には、歴史研究として日本保育学会第65回大会で発表予定である。その他国内学会1件(教育社会学会または教育行政学会)、国際学会1件を予定している。 その他必要となるのは、図書・資料費、資料整理用の文房具、機材などである。
|
Research Products
(2 results)