2012 Fiscal Year Research-status Report
人材の成長要因に関する実証的研究-学歴と労働経験との関連性に注目して
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23730814
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Research Institution | The National Center for University Entrance Examinations |
Principal Investigator |
濱中 淳子 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (00361600)
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Keywords | 学歴の効用 / 人材育成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「大卒」という学歴の意味を理解するため、働く人びとの成長をもたらす要因を学歴別に分析することにある。高卒と大卒とでは、労働市場に参入するスタート段階で蓄積されている知識能力(資本)の「量」も異なれば、その内容である「質」も異なっている。この違いが、人材として成長する際にどのような影響をもたらすのか。成長の糧となる労働経験にも違いがあるのではないか。その答えを探ることで、大学教育の現代的意味を捉えなおし、ひいては大学進学の意義についての示唆を抽出したいと考えている。 2年目にあたる本年度は、企業の人事担当者5名の協力を得て、「人材の成長」に関する聞き取り調査(それぞれ1~2時間ほど)を行った。さまざまな側面から現状や意見を語ってもらう半構造化インタビューである。その結果、いま現在、企業が特に力を入れているのは「一部のトップ層(=幹部候補生)」をいかに成長させるかという問題であり、「中間層」など多くの従業員の成長は、課題として残されている現状が明らかとなった。成長に影響を与える経験についての示唆が得られたというより、本研究の意義を再確認するような内容ではあったが、進め方の見直しを行ったうえで、今後も聞き取り調査は継続していく予定である。 また、そのうえで本年度は、研究の柱となる質問紙調査にも取り組んだ。住民基本台帳をベースに作成した膨大な調査モニターを保有する調査会社の協力を得て、正規社員として働く高卒男子ならびに大卒(以上)男子を抽出して実施した。調査時期は、平成25年1~2月であり、質問紙は、教育経験、就業後のキャリア、職業意識、現在の社会経済的地位について仔細に尋ねる項目によって構成されている。回収数は高卒男子506、大卒男子438、修士卒男子88、博士卒男子26だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は文献調査、インタビュー調査、質問紙調査の3つの調査を駆使しながら大学教育の現代的意義を抽出することを目的としているが、2年目である本年度は、計画どおりインタビュー調査と質問紙調査の2つを実施することができた。 質問紙調査の実施は、研究計画を立てた際に想定していた企業単位の調査ではなく、調査会社のモニターを対象にした調査に切り替えることになったが、1000を超える回答が集まり、分析に十分耐えられるデータセットを得ることができた。なお、企業単位の調査ではなく、調査会社のモニターを対象にした調査に切り替えたことをうけて、現在の働き方について詳しい情報が得られるよう質問紙調査の内容を工夫した。この変更によって、研究の遂行上、問題が生じることはないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、おおよそ次の3点の作業を行う予定である。 (1)質問紙調査で得られたデータの分析 (2)(1)の分析の結果、知見がある程度まとまった時点で、再度企業の人事課に聞き取り調査に行く。人材成長をみるための手掛かりを得るのみならず、分析で得られた知見を提示し、コメントをもらう。 (3)質問紙調査ならびに聞き取り調査の結果を1つの成果としてまとめ、学術誌に発表する、あるいは学会において発表するなどの方法で、社会に発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は主に、企業人事課への聞き取りに必要な旅費、学会発表などにかかる旅費、成果を印刷する際に必要な印刷費などに用いる予定である。また、文献調査も引き続き行っていくため、書籍の購入などにも用いる予定である。
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