2013 Fiscal Year Annual Research Report
人材の成長要因に関する実証的研究-学歴と労働経験との関連性に注目して
Project/Area Number |
23730814
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Research Institution | The National Center for University Entrance Examinations |
Principal Investigator |
濱中 淳子 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (00361600)
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Keywords | 人材成長 / 人材育成 / 教育効果 / 企業内教育 / 所得関数 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人材成長をもたらす経験について,学歴別に明らかにすることにある.その中心的な方法として設定したのは,正規社員として働いている男子を対象にした質問紙調査だが,本年度はこの調査のデータ分析を行った.その結果,「高卒」と「大卒」それぞれの成長をもたらす要因について,次の点が明らかになった. まず,上司・同期・部下との対話量や関係のあり方,与えられた仕事の幅といった仕事経験をめぐる回答について,高卒と大卒とのあいだに目立った差異は確認されなかった.しかし,所得を指標に成長要因を探ると,高卒と大卒とで異なるところがあり,とりわけ次の3点は注目された. 第一に,大卒は最初の仕事に従事している段階において十分に上司と対話できていたことがその後の成長に結びついていたが,高卒は仕事に幅を持たせてもらったことが成長につながっていた.以前,対話はむしろ高卒人材の成長に結びつくという結果を得たことがあったが(濱中2013『検証・学歴の効用』勁草書房),仕事の段階という変数を加えることによって別の側面が新たにみえたことは興味深い.第二に,自己学習が所得に結びついていたのは,大卒のみだった.そして第三に,力量形成に結びつく読書のジャンルに違いが見出された.ビジネス書こそ高卒・大卒の双方に有意な効果をもたらしていたが,大卒の場合はさらに教養書,高卒の場合はノウハウ書,専門書,語学書を読むことが所得の向上につながっていた.幅広さを獲得するための学習に意味があるのか,仕事に直接関係する知識を習得するための学習に意味があるのか,という点で学歴間には明確な違いが抽出されたといえるだろう.
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