2013 Fiscal Year Research-status Report
発達や話題に応じた視覚情報化ツールによる話し合い指導の実証的・実践的研究
Project/Area Number |
23730818
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長田 友紀 筑波大学, 人文社会系, 講師 (70360956)
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Keywords | ファシリテーショングラフィック / 国語教育 / 国語科教育 / 話し合い指導 / 音声言語指導 / 視覚化 |
Research Abstract |
話し合いを、文字言語を使ってフォローするものを「視覚情報化ツール」と呼ぶ。本研究はこの視覚情報化ツールを用いた話し合い指導の小中学校での実践化を目ざすものである。本年度は、歴史的な視点からの調査および実証的な調査・分析をおこなった。 (1)戦後の学校教育における話し合い指導を歴史的に概観するなかで、視覚情報化ツールの実践をそこに位置づけ、今後に向けた課題を明らかにした。制度面・実践面における戦後の話し合い指導の動向について主要なものを概観した結果、話し合い指導は様々な工夫や実践が積み重ねられてきたが中でも、近年ファシリテーション・グラフィックなどで注目されている視覚情報化ツールは、昭和20年代からわずかではあるがその萌芽がみられていた。平成以降においても、日本独自の視覚情報化の試みもさまざまな形で存在していたのである。だが、それらが十分に継承され発展させられてきたわけではなかったことを明らかにした。(長田2013) (2)大学生における視覚情報化ツールの活用実態や、ツールのデザインによる効果についてはすでに考察されてきた(長田2007,長田2009c,長田2010,長田2011b,長田2012b)。そこで、話し合いメモの取り方とその報告の仕方は、学年ごとにどう変容していくのかを調査した。テキストマイニングによる分析の結果、学年が進むにつれてメモと報告書の記述量は増え、その内容も複雑化・高度化していくことが明らかになった。(長田2013) (3)小5と中2について、記号的道具であるメモの取り方によって報告書の記述量や内容に差異がみられるかを調査した。その結果、話し合いメモを図示化するだけで、小5では「論点」、中2では「意見間の関係」、大学生では「意見間の関係」と「論題」の把握がなされやすくなることを明らかにした。(長田2013)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまで実施してきた調査を総合的に分析し、発達的視点から複合的な考察を進め、その結果について学会誌に発表することができたため。また、それらの成果をふまえ、学校教員向けのワークショップにおいても、話し合いの視覚情報化ツールについて説明をおこない広く普及に努めることができたため。さらに、実際の小学校での教室における視覚情報化ツールの活用実態の調査も実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実践化にむけてさらに幅広く現職教員たちにむけてのワークショップを実施し、それらについてのアンケートを実施する。これまでの研究成果とそれらを総合的に考察し、本研究の最終まとめをおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費や物品費が当初の予定より少ない額で執行できたため未使用額が生じた。 この残額も含めて次年度の最終年度は以下のように使用する予定である。(1)総合的な考察をおこなうための文献収集(2)調査結果の発表、および情報収集のための旅費(3)調査結果の投稿料、および英文校閲料(4)総合的な考察をまとめるための資料整理費
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