2011 Fiscal Year Research-status Report
学校数学における証明の生態の国際比較研究:日仏米の教科書と学習指導要領の分析から
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23730826
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
宮川 健 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (30375456)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 証明 / 数学教科書 / 教授人間学理論 / 中学校 / カリキュラム / フランス・アメリカ |
Research Abstract |
本研究は,日本・フランス・米国の中等教育(主に前期)における証明の実際の扱い(生態)と,それぞれの扱いを生じさせている様々なレベルの条件と制約(数学的,カリキュラム的,社会的,etc.)を,各国の数学教科書と国定カリキュラムの分析を通して明らかにすることを目的とする。この目的を達するため,平成23年度は,1)教科書等の資料収集,2)先行研究の収集とレビュー,3)本研究が依拠する「教授の人間学理論」(以下,人間学理論)にもとづいた分析枠組みの構築,4)フランスと日本の場合における教科書と国定カリキュラムの分析を,それぞれ部分的に実施した。 1)2)3)に関しては,フランスで開催された数学教授学夏期講習会(カルカッソンヌ)に参加し,人間学理論の理解を深めるとともに,それを用いた先行研究についての資料を収集した。現地に赴いた際には,フランスの幾何・証明教育についての情報と教科書等の資料も収集した。3)4)に関しては,収集したフランスと日本の教科書と国定カリキュラムの分析を進めながら,いかに証明の生態を生じさせる条件と制約を特徴づけることができるか,分析枠組みの構築を図った。そして,これらの研究の成果を随時論文にまとめ,国内外の学会に投稿・発表した。具体的には,これまでにも取り組んできたフランスの教科書分析の結果についての論文を国内学会誌に投稿,フランス国定カリキュラムの仮分析の結果を日本数学教育学会第44回数学教育論文発表会の論文発表に投稿し発表,日仏の教科書の比較分析の結果を国際数学教育心理学会第36回年会(PME 36)の論文発表に投稿し審査に合格(2012年7月に発表予定),日仏米3ヶ国の比較分析の予備段階の結果を第12回数学教育世界会議(ICME 12)のポスター発表に応募し受理された(2012年7月に発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,ほぼ当初の計画通りに研究を進めることができた。ただ,本研究補助金に応募した当初に計画していた米国での調査は,次年度以降の研究費の都合に応じて実施することとした。また,これまでの成果については,「研究実績の概要」で述べたとおり,研究の結果を論文としてまとめ,国内外の学会に投稿・発表することができ,十分満足できるものが得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は,フランスと日本の場合に焦点を当てた教科書や国定カリキュラムの仮分析が中心だった。平成24年度以降は,各国の資料の分析をより精緻化するとともに,米国の資料の分析に着手し,3ヶ国の比較分析を実施していく。その際,もっとも肝要となるのは,各国の学校数学における証明の生態を生じさせている様々なレベルの条件と制約を明らかにすることである。このことを達成するために,計画当初は,資料収集の困難性等から,国定カリキュラムに限って分析を進めることを予定していた。しかし,平成23年度に行なったフランスの場合の資料収集と仮分析の結果,分析する資料を少し広げることにより,より包括的に種々の条件と制約が明らかになることが予想された。そこで,収集する資料を少々広げて分析を進めることとした。また,米国の資料の分析を進める上での必要に応じて,現地での資料収集等の調査を実施することとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究補助金に応募した当初は,フランスのみならず,米国にも赴き情報と資料の収集を進める予定であった。しかし,交付された研究費が減額されたこともあり,2年目以降の米国の資料の分析における必要に応じて資料収集等のために米国に赴くこととした。このため,次年度使用額が生じた。この分の研究費は,平成24年度以降の国際会議等での資料収集・成果発表の必要と米国での調査の必要に応じて使用する計画である。
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