2011 Fiscal Year Research-status Report
幼児とのコミュニケーション能力を育む家庭科「触れ合い体験」学習プログラムの開発
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23730827
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田甫 綾野 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (00583460)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 触れ合い体験学習 / 異世代交流 / 保育 |
Research Abstract |
本年度は年間を通して高校生と複数回の交流を行っている幼稚園(神奈川県)および中学生と単発のプログラムを数回行っている幼稚園(山梨県)において、活動時の観察と保育者へのインタビューを行い、幼児の異世代交流の実態を調査した。 前者は自由遊び場面における交流であり、生徒によって「かかわり方」に違いが見られたが、生徒自身が試行錯誤して「かかわり方」を模索している様子が見られ、時間が経つにつれて、幼児との「かかわり方」にも変化が見られた。 後者は決められたプログラムでの設定活動であったが、中学生が用意してきた遊びや活動によって、「かかわり方」に違いが見られた。質の高い「かかわり」がもたれていたグループは、中学生が「遊ばせ(教え)」幼児が「遊ぶ(学ぶ)」のではなく、共に同じ行為を行う中で遊びや活動が展開し、中学生が幼児のモデルとなっていることが明らかとなった。また、活動後も幼児が継続的に遊びを展開して行く様子もうかがえ、質の高い「かかわり」は幼児の遊びや生活に大きな影響を与えることが明らかとなった。 これらのことから、生徒一人ひとりが明確な目標や「かかわり方」のイメージをもち、時間をかけて交流を行うことができる場合は、生徒の中で「かかわり方」を模索することができるが、それ以外の場合には、「かかわり方」を視点として生徒に与えることが、質の高い「触れ合い体験」学習を行う際に重要であると考察された。 さらにスウェーデンにおける高齢者と小学生との日常的交流(Klassmorfar)を調査する前段階として、家庭科教育研究者や課外活動の高齢者ボランティアへのインタビュー、公立の複合施設(幼稚園、小学校、図書館、高齢者施設)の調査を行った。そこでは、異世代交流の必要性は語られたが、日常的な交流が行われているわけではなく、スウェーデンにおいても一般的には日本と同様の実態であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象園・校で、伝染病流行での学級閉鎖等があり、交流活動が中止になるなど、当初の計画通りの観察を行うことができなかったものの、質の高い「かかわり」の視点をある程度明らかにし、論文としてもまとめることができ、また、スウェーデンでの調査において、異世代交流の実態を把握することができたことから、初年度としては、おおむね順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で得た視点をもとに、24年度は、第一に、日常的異世代交流の実践を対象とし、スウェーデンにおける小学生と高齢者の異世代交流(Klassmorfar)、幼児と小学生との交流(神奈川県)、幼児と高校生との交流(山形県)における観察および事例分析、保育者・教師へのインタビューを行う。第二に、単発の異世代交流の実践を対象とし、幼児と中学生との交流(東京都)、幼児と高齢者との交流(長崎県)の観察および事例分析、保育者・教師へのインタビューを行う。第三に中学校における「触れ合い体験」学習にかかわる授業の観察を行い、生徒の学びのあり方や変化を明らかにする。 これらの調査から、異世代交流における「かかわり方」のパターンを分析し、質の高い「かかわり方」の視点を明らかにし、25年度には効果的な「触れ合い体験」学習のプログラムを考案し、検証する。 さらに、各種学会等での発表、論文の作成を行い、研究の妥当性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に予定していた、スウェーデン在住の研究協力者の来日が24年度4月に延期になったため、そこに使用する予定にしていた謝金を次年度に使用する予定である。また、24年度はそれに加え、主に調査対象フィールドへの旅費(スウェーデン、神奈川、山形、長崎等)として使用する。さらには、トランスクリプトの作成費、翻訳・通訳費、調査対象者との研究会における講師謝金等に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)