2012 Fiscal Year Research-status Report
数学教育における高次の幾何的思考の育成を意図した授業構成と単元設計に関する研究
Project/Area Number |
23730829
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
影山 和也 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (60432283)
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Keywords | 高次の幾何的思考 / 身体的認知理論 / 質的研究 |
Research Abstract |
平成24年度は,「図形の移動と作図」の授業データの分析によって,幾何の学習にかかる生徒の理解の様相を明らかにすること,「空間図形」の授業計画と実施,幾何的思考の理論的検討が主たる目的であった。 先行研究において,図形間の関係を写像によって理解する前段階として,具体物の動きのイメージ化があることは指摘されてきた。授業データの質的分析の結果,個々の図形を組み合わせることで新たな図形を作り出し,その図形のもつ性質を利用して平行・回転・対称移動を考えることが,具体物の動きを組織する上で大切であることが明らかとなった。それゆえ,図形的性質を道具として意識することは,写像のアイデアの認識を支える重要なステップであるといえる。 次に,実証的研究と平行して,高次の幾何的思考の形成における,形式化することや定義することの位置づけについて検討した。特に,定義を作ることの数学的活動としての重要性は多くの先行研究のなかで指摘されてきた通りである。今年度の理論的検討では,数学的探究としての定義をする活動を,定義される対象の「らしさ」を保ちつつ明確にすることと見なして,身体的認知理論(embodied cognition)に基づいて,一連の定義の構成過程としてまとめた。 最後に,「空間図形」の学習のうち,特に投影的な見方と具体物および二次元表現の理解に焦点をあてて,具体物の見え方とそれを数学的に表現すること,数学的考察による判断との間にある葛藤,すなわち奥行き知覚のような認知と数学的対象の理解との間に生じる葛藤を数学的に処理していく場面を意図して授業の計画および実施を行った。この分析は次年度の目的のひとつとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,高校数学「図形と方程式」の単元設計を行う予定であったが,「図形の移動と作図」をベースとした学習経験の連続性および生徒の認知・認識の発展を活かすため,中学数学「空間図形」の設計・実施へと変更した。 このような具体的な計画の変更はあるが,実証に裏打ちされる理論的考察をするという当初の意図は保たれている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記【研究実績の概要】にも記載したように,収集された「空間図形」のデータ分析を行い,生徒が高次の幾何的思考を身に付けていく過程を実証的に記述する。 またそれと並行して,中学2,3年数学「合同・相似」を題材として,小学算数から中学数学における図形認識をもとにしつつも,将来的な高次の思考につながるような単元設計・実践を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「空間図形」のデータ分析から得られる知見をまとめ,それを国内外の学会で成果発表を行う予定である。また,授業実践を行うための打ち合わせやデータの収集のために,実践校を出入りすることになる。それゆえ,研究費の多くは,これらの活動にかかる移動費にあてる予定である。 また,テーマにかかわる数学教育関連の文献・資料にも相応の経費を計上している。
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Research Products
(5 results)