2013 Fiscal Year Annual Research Report
数学教育における高次の幾何的思考の育成を意図した授業構成と単元設計に関する研究
Project/Area Number |
23730829
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
影山 和也 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60432283)
|
Keywords | 高次の幾何的思考 / 身体的認知理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は,高次の幾何的思考の育成を目指した,中学及び高校数学における幾何教育の改善のための基盤を得ることであった。「高次の幾何的思考」とは,図などの視覚的特徴に惑わされず論理的推論をすることや,定義を適切に設定することによって数学的体系を作り出したりすることを含んでいる。こうした思考のためには,対象の動きを点の対応の仕方によって捉えることや,操作の過程および結果を数学的に記述することなど,さまざまの認識の変化が求められる。上記目的の達成のために,本研究では,何によってこうした変化が起こりうるのかを解明することによって,中学二年「証明」の学習前後から期待される生徒の幾何的思考の記述と,思考が連続的に発展するような授業の構成及び単元の設計を目指した。 平成25年度(最終年度)までに,幾何的思考を記述する理論基盤として「身体的認知理論」とマルチモダリティーの思想に注目した。その上で,認知的対[視点-現れ]と概念的対[視座-相貌]との組合せによって,認知面と概念面とをあわせもつ複雑な幾何的思考の様子を記述する枠組みを提示した。これらの取り組みは,幾何的思考を言葉による発言や図表現だけではなく,具体物の操作や身振り手振りまで含めて包括的に捉えることを可能にする。 最終年度では,「投影的な見方」に関わる実験授業を,上記枠組みを用いながら質的に分析した。その結果として,身振り手振り自体にも幾何的思考を具体から抽象へと転換させたり,推論を進める機能があることなどを指摘した。これはいわば,生徒個々のさまざまの活動自体が思考の連続的発展のための要件であって,特に高次の幾何的思考を可能にする場としての「主題領域」とその変容の概念を提起するに到った。その理論的精緻化は今後の課題であるが,以上の成果は国内および国際学会での発表を予定している。
|