2012 Fiscal Year Research-status Report
「移動する子どもたち」を対象とした中学校社会科教材開発研究
Project/Area Number |
23730840
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
北上田 源 琉球大学, 大学教育センター, 非常勤講師 (00596059)
|
Keywords | 教科教育学 |
Research Abstract |
平成24年度(2年目)は、平成23年度に引き続き、アメラジアンスクールにて同校の中学生を対象とした社会科(歴史)教材の作成/授業実践を行った。それに加え、公立学校の先生方から作成教材についての意見をいただく機会を持つことができた。 平成24年度は、それまで行った保護者対象のインタビュー調査では明らかにならなかった、生徒のこれまでの日米両方の社会科授業の学習内容を把握するための一覧表を作成した。これにより、「研究の目的」で記載した「日本語以外の言語での学びの状況の実態」の詳細について把握することができた。多様なカリキュラム間を移動する子どもたちの、過去の学習内容の詳細まで把握し、それを活かした教材作成を行った実践研究はほとんどなく、本研究の独自性の一つになると考えられる。 平成24年度に作成した歴史学習教材は、平成23年度に引き続き日本語教育における「リライト教材」作成の手法を参考にして、生徒の言語力や移動歴の多様性を考慮にいれながら学習指導要領の内容についても理解を促すものである。また、歴史学習において生徒と似たような境遇に置かれた「国を超えて移動した人物」の視点から歴史を捉え、生徒が自分のことと関連付けて歴史を学べるような工夫も行った。 さらに、平成24年度は県内公立校の教員らが参加する社会科研究会に定期的に参加することに加えて、全国の外国人児童・生徒の教育に携わる先生方が集まる研究集会で使用教材・授業実践についての報告・意見交流をすることができた。こうした公立校の先生方との交流を通して、平成23年度は十分にできなかった教育現場の声を反映する形での教材作成・授業実践を行うこともできた。このような形で、日常的に「移動する子ども」たちの学びを支える教材作成・実践を行う点に本研究の独自性と重要性があると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は公立校の教員の声を取り入れる形での教材作成を行うことができたものの、計画していた「作成教材を使用した公立学校での授業実践」は行うことができなかった。これは、連携を模索していた公立中学校の日本語教室の生徒の実態と本研究における作成教材が対象としている生徒像が異なったためである。 具体的には、当該校の日本語教室で学習する生徒の学年が、本研究において作成した教材の学習内容(日本地理・近代以降の日本史)についての学習を行う学年ではなかったことや、生徒の日本語力がアメラジアンスクール生徒の日本語力と大きく異なることなど、現実的に当該校の日本語教室での教材の使用が不可能だったという事情による。 また、公立学校の日本語教室は年度ごとに契約が更新となる臨時教員が担当していることが多く、生徒も必ずしも毎日日本語教室に来るわけではないこと。また、沖縄県内においては、現行の教育制度上日本語教室自体の存続が保障されているわけではないことなど、不安定な状況があることもわかった。こうしたことも、担当教員と継続的に連携し、日常的な学習における生徒の学びを持続的にサポートするための教材を作成しようとした本研究における作成教材の使用が難しい要因の一つとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでに引き続き年度当初からのアメラジアンスクールにおける授業実践(公民)を行い、生徒の学びをサポートするための教材の作成を行う。特に、平成23年度の地理学習教材、平成24年度の歴史学習教材において教育効果が認められた「移動する人物(外国人や外国にルーツを持つ人物)」を学習内容に取り入れた公民学習教材を作成する予定である。 また、平成24年度は特定の公立校の日本語教室を公立校における授業実践の場として想定したが、「現在までの達成度」で「やや遅れている」理由として記載した通り、授業実践を行うことは難しかった。平成25年度も同様のズレが生じることも予想されるため、引き続き当該校との連携は維持しつつも、それ以外にも実践を行う場所を検討していきたい。 平成25年度は研究代表者が勤務し、授業実践を行っているアメラジアンスクールに沖縄県が日本語指導教材開発事業を委託する予定である。そのため、平成24年度までよりも、幅広く公立校や日本語教室の担当者との連携を深めることも可能になると考えられる。 なお、平成24年度は研究内容の関係から、予定していた調査員・補助員への旅費・謝金等を必要としなかったため、未使用の研究費がある。その使用計画は以下の通りである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 【物品費100,000円】研究計画に記載した物品費に加え、使用した教材を冊子化するにあたり、日常的に教材作成に使用していた用紙よりも上質の用紙を使う必要があるため。【旅費250,000円】当初予定していた研究代表者の学会発表・研究会参加、調査員旅費に加え、教材作成の協力を依頼するための旅費が必要となる。【人件費・謝金 1,150,000円】これまで通り授業記録作成員の人件費が必要である。また、研究代表者が報告書作成に取りかかるため、教材作成の業務をこれまでよりも多く教材作成補助員に依頼する予定である。さらに、公民教材作成に協力を依頼するための謝金も必要となる。そのため、平成24年度よりも多くの人件費が必要となる。【その他 390,000円】報告書作成・印刷のため。
|