2012 Fiscal Year Research-status Report
幼稚園黎明期における造形表現の特質とその展開過程に関する研究
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23730844
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
牧野 由理 東京都市大学, 人間科学部, 助教 (80534396)
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Keywords | 幼稚園 / 明治期 / 美術教育史 / 幼児教育史 / 掛図 / 第五回内国勧業博覧会 |
Research Abstract |
本研究課題は、近代日本における幼稚園教育の造形表現の特質とその展開過程を、幼稚園で使用していた一次史料の調査・図版分析と、小学・中学の「図画科」及び「手工科」との比較検討を通して明らかにするものである。平成24年度は研究計画に沿って、平成23年度に収集した資料のうち、愛珠幼稚園の描画作品集、および舞鶴幼稚園の教具(掛図・絵)を分析・検討した。明らかになったことは以下のとおりである。 1.愛珠幼稚園の描画作品集「第五回内国勧業博覧会記念帖」について分析を行った。その結果、第五回内国勧業博覧会の特徴である余興(ウォーターシュートやイルミネーション、水族館、メリーゴーランド等)を描いた作品が多いことが明らかとなった。当時の保育記録より保姆が「博覧会をしましょう」と幼児に絵を描く際に呼び掛けていたことから、愛珠幼稚園では「博覧会」のイメージを共有していたことも示唆された。 2.図画を行う際に使用されたと推測される教具(掛図や絵)の実態を明らかにするために、京都府加佐郡舞鶴町立舞鶴幼稚園(現・舞鶴市立舞鶴幼稚園)を対象とし、現存する掛図および絵の調査分析を行った。その結果、舞鶴幼稚園では幼児が肉筆(手描き)の掛図や絵を通して本物の絵画作品に触れる機会があったことが明らかとなった。掛図の一部ではあるが舞鶴市出身の日本画家・藤山鶴上とのかかわりが示唆され、画家の作品を幼稚園で直接見ることにより、幼児の図画表現の形成の一端を担っていた。 舞鶴幼稚園の研究結果に関しては舞鶴市教育委員会ならびに舞鶴市郷土資料館への報告を行い、舞鶴市出身の日本画家・藤山鶴上の位置づけや幼稚園資料のデジタル・アーカイヴについて意見交換を行った。実証的な調査・分析による解明は地域の教育史を再検討し価値づける点においても重要性が認められよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画である平成23年度に収集した当該園(東京女子師範学校附属幼稚園・愛珠幼稚園・京都府舞鶴市立舞鶴幼稚園・島根大学教育学部附属幼稚園・土浦西小学校附属幼稚園)の資料の図版分析について、収集した資料が膨大であり論文にできていない部分もあるが、ほぼ目標を達成することができた。 これまでの研究成果についてまとめた拙稿を美術科教育学会の美術科教育学会通信(第82号)に「研究ノート」として寄稿しており、着実に成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策であるが、平成23年度に収集した対象園の所蔵資料を引き続き図版分析し整理する。また小学・中学の図画科・手工科について論及した先行研究を整理し、小学・中学の図画科・手工科の教育観と当時の幼稚園で行われた「図画」「粘土細工」についての相違を分析・検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度に分析した研究成果を論文や学会発表等で公表していく予定であり、そのために研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)