2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730851
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
永井 伸幸 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50369310)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 弱視 / 読書 |
Research Abstract |
視力が低く、鼻が当たるくらいに眼を近づけて読書を行う弱視者にとって、今後の更なる普及が想定される電子タブレット等を用いた教科書や教材は、弱視者の読書にどのような影響を及ぼすのか、読書行動の解析という観点から明らかにすることが本研究の目的である。研究初年度の本年度は、以下の活動を行った。1.読材料を提示するシステムを構築し、読み手が自分で好きに文字サイズを変化させ、そのときの選択文字サイズを記録することができるシステムを作成した。2.接近視をしながら読書を行っている様子をとらえるために、眼球運動測定装置の導入について慎重に検討し、多チャンネルデータ収録解析システムにEOG測定ユニットを加えたシステムを導入した。このシステムであれば、拡張性が高く、他の動作測定システムも追加して同時測定が可能であり、研究の幅を広げることができる。3.ディスプレイで読書をする際の問題の1つは、画面の明るさである。「普通」の明るさであっても、弱視者の中にはまぶしさを訴えたり、照明不足を訴えたりする者もいる。そこで、画面のコントラストと本人の好む読書環境の関係を明らかにするために、画面のコントラストとそのときの読みたい文字サイズの関係について研究を行った。晴眼者を参加者とし、通常条件と白内障シミュレーション条件、通常画面条件と白黒反転画面条件を設定した。その結果、通常条件と白内障シミュレーション条件の両方で、白黒反転画面の方が通常画面よりも読みたいと思う文字サイズが小さかった。また、コントラストを低下させると読みたい文字サイズが大きくなっていった。これらのことは、コントラスト調整や白黒反転ができるディスプレイ表示による読書が弱視者の読書効率を上げる可能性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
読材料を提示するシステムについては基本的な方法を確立することができた。その作成した読材料提示システムを用いて、眼球運動測定の後で実施を検討していた、コントラストと読みたい文字サイズの関係について実験を実施し、紙ではなく画面を読むことが弱視者の読書に及ぼす影響についての基礎的な知見を得た。一方、眼球運動測定システムについては、交付された予算額を鑑み、予算交付額の範囲内で最も適切な機器を導入するため、慎重に検討を行った結果として、導入が年度末となった。しかし、物品費の有効使用につながり、基金化を活かして次年度の活動予算に余裕を持たせることができた。全体として、一部研究の準備が遅れた面はあるが停滞はしておらず、他の面で予定を上回る進捗状況であるので、おおむね順調であると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は2年計画の2年目であるので研究をまとめるための作業を進める。はじめに開発した提示システムを用いて、EOGによる眼球運動測定を実施し、弱視者の読書中の眼球運動を測定する。読速度、眼球運動の振幅(一度に何文字読んでいるか)等の指標について、紙条件と対照して、接近視による読書の特徴を検討する。その結果を整理・分析し、弱視児童生徒に配慮した電子教材作成上の留意点としてまとめ、公開することを目指す。その間、学会等への参加、発表の機会に他の研究者や実践者から助言を仰ぎ、実験や成果のまとめがより有益なものとなるよう努める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:データ分析に必要なソフトウェアを購入する。分析結果の処理のため、多変量解析の可能な統計解析ソフトウェアとそれが高速に処理できるコンピュータを購入する。EOGシステム導入後に、そのシステムで得られるデータの形式等を考慮して購入を検討することとしていたため次年度に購入することとなった。その他、データの測定、記録、保存に必要な物品を購入する。旅費:研究体制構築中の本年度に旅費を執行するよりも、ある程度成果を有している次年度に、次年度の旅費と合わせて執行した方が有効であると判断した。次年度は、本実験を実施するが、その際に参加者の負担軽減のため、こちらから参加者のもとへ出向いて実験を行う。そのための旅費を支出する。研究の経過発表としてECVP学会(European Conference on Visual Perception)にて発表を行う旅費を支出する。この学会は"Perception"という著名な知覚心理学雑誌を刊行している学会であり、知覚研究の立場から有益な助言が得られることが期待できる。すでに発表の申し込みをし、受理されている。また、情報収集、助言を得るために、日本特殊教育学会大会、日本ロービジョン学会大会、弱視教育研究全国大会等への旅費を支出する。謝金:実験を実施するにあたり参加者に謝金を支出する。また、データ分析に際して分析員を募り謝金を支出する。その他:研究の最終年度のため報告書作成のための諸経費を支出する。
|