2012 Fiscal Year Research-status Report
盲ろうおよび感覚障害を有する重複障害児の共同注意に関する実践的研究
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23730859
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
中村 保和 群馬大学, 教育学部, 准教授 (60467131)
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Keywords | 盲ろう / 共同注意 / 教育実践研究 |
Research Abstract |
本年においては、3名の対象児に対して教育実践を行った。 対象児Aは、知的障害を有する盲ろう児(13歳)である。対象児Aとは、振動する玩具や楽器を用いて、係わり手との共同注意の成立を試みた。共同注意の成立を試みるに際しては、触覚的な手がかりを介した共同活動を心がけ、お互いの手や足が触れあうような姿勢・状況を設定し、対象児に係わり手もしくは係わり手が操作する教材・玩具等に対して探索的な動きが発現するようにした。こうした経過の中で、対象児の探索的な動きの発現が、触覚的な共同注意行動の端緒となることがわかった。 対象児Bは、知的障害を有する弱視児(8歳)である。対象児Bは、強度の弱視であるものの強い光や赤いものに興味を示して自身の目を近づける様子が見られる。また、聴覚反応は良好で、特にキーボードや電子玩具などの音や音楽にはさかんに興味を示す。係わり手は、対象児が見やすいものや注目する音や音楽の提示を通して、「対象児-物-係わり手」による視覚的共同注意の成立を試みた。これらの経過においても、対象児が視覚的に探索できる(じっと見つめる、見比べる)ような状況をつくること、音に関しては聞き入るような活動を提供することが、係わり手との視覚的共同注意を成立させる端緒となることが明らかになった。 対象児Cは、知的障害を有する聴覚障害(高度難聴)児(5歳)である。教育実践を介しして間もないために、まだ研究データの蓄積は不十分であるものの、本児においても、外界への探索的な働きかけが展開するのと平行して、係わり手への注意や対象物への注意が持続する様子が確認されている。 こうした経過から、対象児らと係わり手との共同注意の成立は、1)対象児らが利用しやすい感覚モダリティーに即した刺激を提示すること、2)その刺激に対する自主的・能動的な探索行動の発現を促すこと、の2つが重要な条件となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度と同様に、対象児(者)らへの教育実践を継続した。教育実践において得られた研究データについては、研究協力者との研究協議を定期的に行いながら、データ分析の精度を確保し、その成果については、特殊教育学会や教育心理学会における自主シンポジウムなどを通して発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度前期においては、これまでと同様に盲ろうおよび感覚障害を有する重複障害児に対する教育実践を行い、研究データの蓄積に努める。あわせて、これまでに記録・蓄積された研究データの整理を行うとともに、随時、データ分析を進めていく。年度後期においては、研究データの分析に専念し、研究成果の公表に向けた論文執筆に取りかかる。論文については、大学紀要および学術誌への投稿を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
盲ろうおよび感覚障害を有する重複障害児に対する教育実践において必要とされる教材・教具(スイッチ教材、玩具、楽器なども含む)の購入に使用する予定である。また、研究データ記録・保存のためのメディア(DVD-RW、外付けハードディスク、USBメモリ、SDカードなど)を購入するとともに、必要に応じて再生機器等を購入する予定である。さらに、情報収集および研究成果発表のための各種学会・研究会に参加する際の旅費に使用する。
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