2016 Fiscal Year Annual Research Report
Educational and social basis of introducing oral method in education for the deaf in Japan
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23730865
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
佐々木 順二 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (20375447)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 聾学校 / 口話法 / 官立東京聾唖学校 / 教師教育 / 日本聾唖教育会 / 特殊教育 / 熊本県 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、これまで収集した資料に基づく学会・研究会での発表を2件おこなった。 1)口話法を支える専門的教員の養成と補充: 昭和初期から昭和30年代までの熊本県を事例として、聾学校及び盲学校の専門的教員の養成と補充がどのように行われたのかを、教職員の教育歴、保有免許状の内容から分析した。その結果、(1)戦後期においても官立東京聾唖学校、同盲学校師範部の卒業生が少人数であっても指導的役割を果たしたこと、(2)戦後期の新学制で開始された教育職員検定、聾学校小学部臨時教員養成所が免許保有率向上に大きな役割を果たしたこと、一方で、(3)聾学校教員には中等教育修了者が多く、仮免許状の者が6割近くいたことが明らかになった。 2)昭和戦前期の日本聾唖教育会共同研究発表会における熊本県立盲唖学校からの発表内容の分析:日本聾唖教育会(大正13年設立)が毎年開催した共同研究発表会における、熊本県立盲唖学校(以下、熊本校)からの発表件数は、官立東京聾唖学校、東京市立聾学校に次いで多かった。発表内容の分析の結果、(1)熊本校は、聾児の教育内容・方法に関する幅広い関心をもち、特に言語指導の鍵である低学年児童の教育の重要さに関心があったこと、(2)熊本校の教育内容・方法の整備の時期が、県立移管、校舎新築移転等の基盤整備の時期と重なっていたこと、そして(3)官立東京聾唖学校師範部出身教員のリーダーシップがあったことが明らかとなった。 補助事業期間全体を通じて明らかになった重要な点は、官立校師範部や日本聾唖教育会等の教師ネットワークが専門的教員の養成と地方校の基盤整備に貢献した一方で、「劣等児」問題に示される、指導困難の課題が戦後期にも存続したことである。この問題への対処の経緯は、戦後期の指導法をめぐる議論だけでなく、義務就学制実施後の特殊教育のもつ基盤的性格とも関連させた分析が必要となる。
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