2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 紀行 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (00553629)
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Keywords | 半単純リー群 / Jacquet加群 |
Research Abstract |
昨年度に,Jacquet加群の幾何学的実現に関する研究を行った.これは従来使われていた旗多様体ではなく,対称空間とそのコンパクト化を用いることで,その境界に向けて極限をとることで自然にJacquet加群を実現したものであった.得られたJacquet加群は極小放物型部分群に対応する一般旗多様体(の複素化)の上の層として実現される. 一方,放物型誘導表現は極小放物型部分群に対応する(実)一般旗多様体の上のベクトル束の切断として実現され,このことを用いて,一般旗多様体のBruhat分割と呼ばれる分割からJacquet加群のフィルトレーションを定めることができ,これが本研究の出発点となった. このフィルトレーションが,昨年度に得た幾何学的実現の言葉を用いてどのように記述されるのかは自然な問題であり,またこのようにして両者をつなぐことで,新たな理解を得ることが可能であると期待できる.昨年度に幾何学的に実現されたJacquet加群と,そもそも調べる対象であった放物型誘導表現は,実・複素という違いはあるものの,同じ極小放物型部分群に対応する一般旗多様体を用いて実現がなされており,この多様体の幾何学的な言葉を用いて記述がされると有用であると考えられる. 放物型誘導表現のJacquet加群のフィルトレーションを定義した時と同様に,Bruhat分割を用いて幾何学的に得られたJacquet加群のフィルトレーションを考えることができる.この単純なアイデアを元に,二つのフィルトレーションの比較を試みたが,残念ながらまとまった結果を得ることはできなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は,モーメントグラフの理論を整備し,その事実を用いて放物型誘導表現のJacquet加群の記述を行う予定であった.しかし,昨年度にJacquet加群の対象空間を用いた幾何学的な実現を得ることができたため,予定を変更してこの実現と,既に得られていた放物型誘導表現のJacquet加群の構造定理との関係を調べることにした.これは,この間の関係を明らかにすることが求めている放物型誘導表現のJacquet加群の計算を行う際に有用であると考えてのことであった. 今年度はその関係を調べる研究を行ったものの,思いの外難しく,部分的には結果を得ることができたものの,まとまった結果を得ることができなかった.研究計画とは少し違った方向での研究であったこともあり,全体としては「やや遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られたJacquet加群の幾何学的な実現を更に調べることを試みたが,まとまった結果を得ることはできなかった.これはそもそもの研究計画を進める際に有用であると判断してのことだったのだが,このことに時間を用いていては本末転倒である.そこで,来年度は元の計画に戻って,モーメントグラフの理論を欲しい場合に精密化することを目標とする.その上で得られた結果を用いて,放物型誘導表現のJacquet加群の記述を行う.最後の計算の際には,Jacquet加群の幾何学的な実現が有効に働くと思われる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に生じていた未使用額について,引き続き研究成果の発表,国内外の研究者との議論,また集会参加による情報収集などのための旅費として利用する予定である.
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Research Products
(1 results)