2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740008
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小島 秀雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90332824)
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Keywords | アフィン代数曲面 / 開代数曲面 / 対数的小平次元 / 対数的多重種数 / 正規デルペッゾ曲面 / 多項式環 |
Research Abstract |
今年度はアフィン代数曲面、正規デルペッゾ曲面、多項式環の部分環について研究を遂行し、以下のような結果を得た。 1. 対数的小平次元が1以上となる開代数曲面の対数的n種数が正になるような自然数nの範囲を任意標数で調べた。その結果、対数的小平次元が1となる正規アフィン代数曲面の対数的12種数が正になることが分かり、昨年度までに得られている結果を改良することができた。更に、対数的小平次元が2となる曲面についても部分的な結果を得ることができ、現在も研究を遂行中である。 2. 研究代表者が以前確立したオイラー数がゼロ以下となる正規アフィン代数曲面の構造定理を用いて、ピカール数1の射影的正規有理曲面上の曲線について、その曲線の補集合のオイラー数がゼロ以下であるとするとその曲線の各既約成分が有理曲線になることを証明した。これは射影平面内の曲線の場合には既に知られているが、これを一般化した。 3. 高々有理的対数的標準特異点を持つピカール数1の正規デルペッゾ曲面について, そのような曲面の特異点の個数が5以下であることは高橋剛氏との共同研究により得られている。今年度はそのような曲面の内、特異点の個数が多いものの分類について研究し、特異点が5個の場合を完全に分類した。現在、特異点が4個になるものの分類を高橋剛氏と行っている。 4.UFD上の多項式環における、定数多項式でない1個の多項式で生成される部分環の族について、その族の元が包含関係で極大であることとその部分環が多項式環内で整閉でかつその多項式の係数の最大公約元が1になることが同値であることを証明した。この結果は体上の多項式環の場合には知られているが、これを一般化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画で予定していた研究内容は(1)対数的小平次元が1となる正規代数曲面の対数的n種数が正となる自然数nの値の範囲と対数的n重標準写像が曲線のペンシルを与える自然数nの値の範囲を調べる、(2)体上の多項式環の導分や高階導分の核に関する結果を整域上の多項式環の場合にも成り立つかどうか調べる、(3)高々有理的対数的標準特異点を持つピカール数1の正規デルペッゾ曲面の分類を特異点の個数が多いものを中心に行う、であった。 上記の研究課題のうち、(3)は特異点の個数が最大のものを完全に分類することができており、最大から一つ少ない場合も順調に研究が進んでおり、当初の予定通り進展している。(1)については、対数的n重標準写像の解析をまだ行えていないが、平成25年度で研究を行うことを予定していた対数的小平次元が2の場合についても結果を得ており、順調に研究が進んでいると判断している。(2)については研究実績の概要欄にある4の成果しか得られていないが、これだけでもかなり面白い結果であり、出版する価値があるものと思われる。その他、研究実績の概要欄にある2という、当初は予定していない結果も得ることができた。 研究計画で予定していた研究課題で一部未解決の部分があるが、これは平成25年度にも平成24年度で残された研究課題を行う予定で計画しており、研究計画で予定したことはほぼ予定通りに研究が進展している。更に、当初の研究計画にない研究成果も得ることができ、研究実績の概要欄にある研究成果のなかから複数の学術論文を発表することができている。以上の理由により、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の予定通り、これまでに得られた研究成果を用いながら、平成24年度で残された課題について研究を行うことを主とし、更にこれまでの研究の過程で新たに生じた課題についても研究を行う。具体的には以下の事項について研究を遂行する。 (1) 対数的小平次元が1となる非特異アフィン代数曲面の対数的n重標準写像が曲線のペンシルを与えるような自然数nの値の範囲を求める。(2) 非特異部分の対数的小平次元が2となる正規アフィン代数曲面の対数的n種数が正となる自然数nの値、可能ならばそのようなnの最小値を求める。更に曲面の座標環がQ分解的になる場合にそのようなnの値が改良できるかどうか調べる。(3) 高々有理的対数的標準特異点を持つピカール数1の正規デルペッゾ曲面について、特異点の個数が4の場合を中心に特異点の個数が多いものを分類する。(4)体とは限らない整域上の多項式環について、その整閉多項式と導分や高階導分の核との関係、および、2変数の場合の階層的局所有限高階導分の核の構造について調べる。(5) 正標数での非特異射影代数曲面上の因子DでそのD次元と数値的D次元が異なるものを、これまでの研究で得られた任意標数での対数的小平次元が1となる開代数曲面の構造定理と田中公氏による正標数での対数的代数曲面の極小モデル理論を用いることにより分類する。更にこの結果を用いてGorenstein正規完備代数曲面の分類理論が確立できるかどうか調べる。 上記の研究課題のうち、(1)、(2)、(4)、(5)はアフィン代数幾何学や正標数の代数幾何学の専門家との研究打ち合わせも行いつつ研究を遂行する。(3)はこれまで共同研究を行ってきた長岡工業高等専門学校の高橋剛氏とともに研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は今年度未使用分33,183円と次年度配分金である90万円とを合わせて、以下のように使用する予定である。 研究を遂行するのに新たに必要になる代数幾何学、可換環論、複素幾何学、トポロジーに関する図書と論文誌を約20万円分(約1.5万円×12冊、約1万円×2冊)購入する。また、新潟大学で購入していない学術雑誌に掲載された論文(約5万円分)を購入する。更に、多項式に関する計算と論文執筆に必要となる計算機用ソフトウェア(約8万円分)を購入する。 旅費は次のように使用する。研究集会での研究発表とアフィン代数幾何学や代数幾何学の分野の研究者との研究打ち合わせのための旅費として約47万円分(内訳 関西学院大学5日間@10万円×1回、高知大学5日間@10万円×1回、首都大学東京2日間@4万円×2回、京都大学3日間@7万円×1回、九州大学3日間@7万円×1回、東京大学3日間@5万円×1回)使用する。また、長岡工業高等専門学校の高橋剛氏と共同研究を行うために、長岡工業高等専門学校への研究打ち合わせ旅費として6万円(1日間@6千円×10回)使用する。更に、研究代表者が世話人となっている高知大学で開催される研究集会での研究発表と研究打ち合わせを行うため、研究集会の参加者の旅費として約7万円(3日間@7万円×1名分)使用する。
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