2011 Fiscal Year Research-status Report
リーマンゼータ函数の微分から生じる新約数問題に関する研究
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23740009
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
南出 真 京都産業大学, 理学部, 講師 (80596552)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リーマンゼータ / ゼータの微分 / 約数問題 / ゼータの零点分布 / グラフのゼータ / マース形式(インド・アラハバード) |
Research Abstract |
2011年度における主たる目標はリーマンゼータ函数ζ(s)の一階導函数ζ'(s)の有限型ヴォロノイ公式を得ることであった. この研究は古くから研究されているディリクレの約数問題に関する研究から生じるものであるのでとても重要なものであり, 解析的整数論における新しい問題であると思われる. それ故新約数問題と呼んでも良いと思われる. またこの研究はζ(s), ζ'(s) の零点分布の研究にも応用が期待できるものと思う. リーマンゼータ函数の一階導函数の有限型ヴォロノイ公式とはゼータ函数の一階導函数を二乗し, そのディリクレ級数の係数 D(n) (約数函数の類似) の有限和を考え, その残余項をベッセル函数などの有限和で書き表す公式である. この新ヴォロノイ公式をD(n), log nx, ベッセル函数などの有限和で表すことに成功した. またこの公式を余弦函数を用いて書き改め, その残余項の2乗平均値定理も得た. これらの研究成果は日本数学会の総合分科会(信州大, 2011年10月1日), 年会(東京理科大, 2012年3月29日), インド・アラハバードのハリシュチャンド研究所(2011年, 9月3日)で口頭発表した. これらをまとめた論文を現在執筆中である. ヴォロノイ公式の出発点はペロンの公式である. インド・アラハバードのハリシュチャンドラ研究所のチャクラボルティー氏訪問中にこのペロンの公式について考え, ある種のペロンの公式の応用としてマース形式のL函数に対応する素数定理についてチャクラボルティー氏と考えた. それはL函数 L(s) の逆数を考え, そのディリクレ級数の係数の和を評価した. 共著論文としてその成果をジャーナルに投稿した. 素数定理をマース形式のL函数に拡張したものであるからとても面白い結果だと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度における主たる目標であったリーマンゼータ函数の一階導函数に対する有限型ヴォロノイ公式を得ることが出来たし, さらにそのヴォロノイ公式の二乗平均値定理も得ることができた. 上に述べたようにこれらの成果を日本数学会で2回, インド・アラハバードのハリシュチャンドラ研究所で1回講演した. これらの成果はひとまとめにして2012年度中にはジャーナルに投稿できると思われる. 2011年度はこれらの成果を得るために研究協力者の方々とのこのテーマに関する議論の機会を多く持つことができた. また, まだ成果は出ていないがグラフのゼータに関するセミナーを研究協力者の方々と行いこれに関する新たな研究テーマを模索することもでき大変有意義だったと思う. さらに, 本研究課題に至るもともとの研究, リーマンゼータ函数の導函数の二乗平均値定理, 零点分布に関する研究(名古屋大, 青木氏との研究)が一段落し論文にまとめてジャーナルに投稿した. また, インド滞在中にチャクラボルティー氏と取り組んだ上記マース形式のL函数に対する素数定理の研究も2012年2月に論文としてまとまり, ジャーナルに投稿した. これについてはさらなる問題もいくつか生まれて, 引き続き2012年度にチャクラボルティー氏との研究を進めていく. 主たる目標の有限型ヴォロノイ公式と, その問題を考える中で新たに生まれた話題に関しての結果を得ることができたので計画は順調であると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度には次のような研究を進める. 先ずは, 2011年度の有限型ヴォロノイ公式に関する成果の論文をまとめジャーナルに投稿する. 主たる目標はこの有限型ヴォロノイ公式を無限級数型に拡張することである. リーマンゼータ函数の一階導函数の2乗やガンマ函数などの積分を考えて留数計算から一般化されたベッセル函数にlog nx などがかかった函数を導き無限級数型のヴォロノイ公式を得て, 可能ならば論文にまとめたい. その為に研究協力者の方々に話を聞いていただき意見を頂きたいと思う. またもう一つの主たる目標として, Titchmarsh によるリーマンゼータ函数の二乗の近似函数等式を導く手法を応用してリーマンゼータ函数の一階導函数の二乗の近似函数等式を導くということにも取り組みたいと思う. グラフのゼータやリーマンゼータ函数の二乗平均値についても研究協力者と少しでも議論できればと思う. また, 研究実施計画ではリトアニア・ヴィルニウス大のガルンクスティス氏とセルバーグゼータ函数について議論したいとあるが, 昨年のインド・アラハバード滞在中からのチャクラボルティー氏とのマース形式のL函数の研究を優先したい. 具体的には2011年度に得た結果と, マース形式のL函数の対数微分をディリクレ級数で表したときの係数の有限和の評価との関係(同値ではないかと思っている.)を明らかにしたい. この為にインド・アラハバードのハリシュチャンドラ研究所のチャクラボルティー氏を再訪する, またはチャクラボルティー氏に京都に来てもらおうと思う. また, 新たに名古屋大の藤澤雄介氏に研究協力者になって頂き, チャクラボルティー氏との研究を代数的なデデキントゼータ函数に応用することにも取り組みたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
有限型ヴォロノイ公式を無限級数型に拡張する研究, Titchmarsh の手法によるリーマンゼータ函数の一階導函数の二乗の近似函数等式の研究を進める為に研究協力者である谷川氏(名古屋大), 古屋氏(沖縄高専)との研究打ち合わせのための旅費さらに学会発表に行く為の旅費, さらにその派生問題であるデデキントゼータ, グラフのゼータなどの研究の為に研究協力者藤澤氏, 青木氏, 矢代氏(いずれも名古屋大), 豊田氏(鈴鹿高専)との研究打ち合わせのための旅費に25万円使おうと思う. また, 海外の研究協力者であるインド・アラハバードのハリシュチャンドラ研究所のチャクラボルティー氏とのインドでの研究打ち合わせの為の旅費(1,2週間程度), 及び氏との京都で打ち合わせの為の京都産業大学滞在費(最長7日位)などに合計30万円使いたいと思う. 残り5万円はそれらの研究を進める上での書籍代に使いたいと思う.
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Research Products
(3 results)