2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川ノ上 帆 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (50467445)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 特異点解消 |
Research Abstract |
本課題ではイデアリスティック フィルトレーション プログラム(以下IFP)に沿って任意標数の代数閉体上の特異点解消について研究を進める. 平成23年度は申請時の予定通り整閉包を用いるアルゴリズムと微分閉包のみを用いるアルゴリズム双方について考察した. 前者に関しては未だ捗々しい進展は得られていないが, 後者に関してはIFPの枠内で曲面の埋め込み特異点解消の簡易な別証明を与え, 一定の進展を得た. また技術的困難の一つであった同伴改変の代数化を確立した. 以下にその内容を詳述する. 本研究者は本年度共同研究者の松木教授と共にスペインのビラマイヨール教授を訪問し, 彼らの曲面の埋め込み特異点解消の別証明について学んだ. 彼らのアプローチは一般射影を用いておりIFPとは異なるが, アルゴリズムの最終形の一つである単項型の場合に用いられた手法はIFPの下でも機能することが分かった. その後松木教授が数理研に滞在し, 我々はこの手法をIFPの枠組みの下で簡易化する作業を進めた. その結果, より内在的で簡潔な不変量の定義を与え, 比較的見通しの良い別証を与えることに成功した. 主結果自体は既知であるが, IFPの枠組みにおいて別証明を与え未解決である三次元の場合へ可能性を拓く意味で有意義な結果と考えている. 特異点解消のアルゴリズムに現れる同伴改変という変形については完備化レベルでの定義は確立していたが, それを代数化する問題も技術的な懸案の一つであった. 本年度は, かねてより森教授の示唆にあったヘンゼル降下の手法を用いてこの同変改変の代数化を確立した. これは不変量を用いて爆発の中心を定める際に不可欠な性質であり, 技術的ではあるが重要な進展と言える. 以上の結果は松木謙二氏との共著論文にまとめ現在投稿中である. 以上が平成23年度の研究実績の概要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績欄にも書いた通り、微分閉包を用いたアルゴリズムの側では一定の進展を得られたが整閉包を用いたアルゴリズムの側の研究が進んでいない、というのが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ微分閉包を用いた方針で一定の進展を得ているがこの方針で仮に3次元の場合までは解決出来ても一般次元への展望が開けているとは思えないというのが現時点での正直な感覚である。そこで整閉包を用いる方針について研究を進めることを今後の主眼としていきたい。一方で同分野の他の研究者達との交流を盛んにし、様々な視野を吸収して我々の方針と比較検討することにより、それぞれの方針の長所を取り入れて研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は当初予定していなかった別経費での海外出張があり国内出張が減った結果、予定していた研究費の一部を次年度に繰り越しすることになった。繰り越し分は次年度初頭のベトナムでの研究集会、7月のレーゲンスブルグ大学訪問など新たに出来した海外出張に充当する所存である。次年度は6月にもクレイ研究所主催の特異点解消に関する夏の学校で連続講演を行う予定であり、これらの機会を生かして多くの同分野の研究者との議論を通じ他のアプローチを積極的に吸収し、それを参考としつつ整閉包を用いたIFPの研究を進める予定である。一方で夏期には共同研究者の松木教授が数理研に滞在するので、微分閉包を用いたIFP、なかんずく三次元の場合の埋め込み特異点解消について研究を進めたいと考えている。
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Research Products
(5 results)