2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740017
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高木 聡 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 数学研究所員 (20456841)
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Keywords | 国際研究者交流、フランス |
Research Abstract |
Zariski-Riemann空間の研究に先立ち、一度非ネータ環およびその上の加群の理論の総点検を行うことが必要となったため、その足固めを行った。これまで試みてきたスキーム理論の拡張において出現した「環」はアーベル群のなすモノイダル圏の可換モノイド対象ではなく他の代数上の可換モノイド対象になっているため、従来からある可換環の理論がどの程度まで拡張可能かがわからず、かつ参考文献がほとんどない。遡ると線形代数レベルでも色々なおざりにされている部分が多いため、一から書き直すことになった。 いくつか重要な発見を挙げておくと(1)環や加群がスペクトラム・O_X加群の圏に忠実充満に埋め込むことは一般の代数系で成り立つ。一方でZariski-Riemann空間と付値環、正規環の対応は代数系に依存する。(2)線形代数レベルの話の多くは正規環まで拡張できる。(3)加群の素因子の概念はWeak Zariski primeを用いると非ネータ環まで自然に拡張でき、Krullの共通部分定理などに様々な応用がある。(4)行列式の理論は外積代数の「自然さ」を特徴づけないといけないが、そのためには次数付き微分代数まで持ち上げて議論する必要がある。(5)Poincare級数などはK群で計算が可能である。一方でK_0はDedekind環などの有名なクラスを除くとまだ完全にわかったとは言えない、などである。 これらはまだ下準備であるが、予想以上の大部になってしまい、まだ作業が完了していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Zariski-Riemann空間の研究に必要な土台となる環論、加群の理論の整備はほぼできつつある。 ネータ可換環論の理論の、非ネータ環やより一般の可換モノイド対象への拡張可能性および限界の検証についてはある程度達成された。非ネータ環論においてはPrufer環の理論がZR空間の研究に非常に応用が効き、かつ簡明であることがわかる:Prufer環上の有限生成射影加群は直線束の直和に分解することがわかっているので、局所的な分析はできる。問題はZR空間が局所的にアフィンでないことがどう影響するかが未だによくわかっていない。アフィンの場合とズレがあるとすれば、それを測る(コ)ホモロジカルな理論が必要になるかも知れない。 代数的整数環のスペクトラムの数論的コンパクト化については、その上の加群がノルム付き加群に対応することはわかっている。そしてそのノルムは内積から導入されるノルムに制限されないため、数論的により多くの情報を含んでおり、実際にKapranov-Smirnovのノート(未出版)で指摘されているように相互法則を用いたRiemann-Rochを公式の導出に応用出来る可能性がある。しかし、その加群たちのなす圏のおおまかな性質をアーベル圏の公理のように定式化する必要があるが、その点についてはまだ手がついていない。実際、K0群を定義するためには短完全列のクラスを指定しなければならず、その点がRiemann-Rochで一番のポイントとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
上にも述べたように、Zariski-Riemann空間が局所的にアフィンかどうかというのは非常に重要な問題である。実際にTemkinなどが考えているPruferスキームとの類似やギャップを考察する必要性がある。また、ギャップが有る場合にはそれを測る不変量を開発しなければならない。 Zariski-Riemann空間以外の、一般の可換モノイド対象を用いたスキームについてはより問題が難しくなる。例としてF1上のスキームというものがあるが、これは有限生成なモノイドスキームに限定するとモノイド環を対応させることによりトーリック多様体の理論に帰着する。モノイドではなく環を考えるので代数系としてはより大きなものを考えることになるが、この方が加群やコホモロジー理論がより扱いやすいものとなる。 このことを踏まえると、代数的整数環のスペクトラムを数論的コンパクト化してその上の加群(ノルム加群)を考えたとき、そのノルムに依る単位円盤は凸体となるが、凸体そのものを考えるよりも対応するトーリック多様体を調べる価値があるのかも知れない。 それ以外に取り組むべき事柄として、ノルム加群の圏の持つ性質の公理化というものがある。前述のようにRiemann-Rochの証明には何をもって短完全列とみなすか、を定式化しなければならないからである。これについてはアラケロフ幾何学の方面でも解析トーションの特徴付けなどに際し需要が高まっているが、まだ手付かずのようである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外も含めた各種研究集会への出張・滞在旅費が研究費の主な使用用途となる予定である。備品については、レーザープリンタのトナーなどの消耗品の補充、および研究集会のスライド発表を録画するためのビデオカメラ等を購入予定である。
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