2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740026
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 健 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90362409)
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Keywords | モジュライ |
Research Abstract |
本研究の大きな目標は射影平面上のルポティエのstrange duality予想を解決することであるが,今年度はこれに関して二つの研究を行った.射影平面上のstrange dualityは,第一チャーン類が0,第二チャーン類がnの階数2半安定層のモジュライ空間と,第一チャーン類がd,正則オイラー標数が0の半安定純一次元層のモジュライ空間に対して,それぞれのモジュライ空間上のしかるべき直線束の大域切断が双対になる,という予想である.今年度行った一つ目の研究は,d=5の場合に一次元層のモジュライのテータ因子と射影平面上のヒルベルトスキームとの関係を記述したことである.具体的には,途中で現れるブローアップブローダウンの様子を記述した.この研究の意義は一次元層のモジュライ上の直線束の大域切断の次元の計算をヒルベルトスキーム上のそれに帰着していることである.実際d=4の場合は本研究者はこの帰着を用いて一次元層のモジュライ空間上の直線束の大域切断の次元を計算した.今年度行った二つ目の研究は,d=4の場合の研究である.d=4の場合は2年前に本研究者が一次元層のモジュライ空間上の直線束の大域切断の次元を計算し,nが6以下の場合にstrange dualityが数値的には成り立っていることを示していた.「数値的に」というのは,双対であると期待されているベクトル空間の次元が等しい,ということである.今年度は,d=4の場合のstrange duality 写像の全射性を示した.これにより,d=4かつnが6以下の場合は,strange duality予想が正しいことが分かった.証明で,射影平面上の半安定層のモジュライから平面4次曲線上の安定ベクトル束へのモジュライへの制限写像を調べることになる.この制限写像を調べることの重要性を示唆しているのがこの研究の意義である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
d=5の場合にも,一次元層のモジュライ上の直線束の大域切断の次元の計算をヒルベルトスキーム上のそれに帰着したが,ヒルベルトスキーム上の直線束の計算が,d=4のときとは異なり,困難なため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,射影平面上のstrange dualityの解決を目標としてベクトル束のモジュライの性質を調べる.具体的には,d=5の場合に重要性を示唆されている曲面上の半安定層を曲線上に制限する制限写像の様子を調べる.また,K3曲面やエンリケス曲面上でもstrange duality現象がないか探す.また,昨年度行った曲線上のSO束の場合のstrange dualityの研究も時間があったら復活させて続きを調べてみたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
射影平面上のstrange duality予想が,当初の予想より複雑であることが分かってきて,予定に反して時間がかかっている.このため,K3曲面やエンリケス曲面といった射影平面以外の場合のstrange dualityの探索に着手出来ずにいる.これが次年度に使用する予定の研究費が生じた主要因である.次年度は,K3曲面やエンリケス曲面上のstrange duality現象を探す.その際,K3曲面上のベクトル束について詳しい京都大学数理解析研究所と研究打ち合わせを行う.
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