2013 Fiscal Year Research-status Report
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23740029
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
軍司 圭一 千葉工業大学, 工学部, 助教 (00550659)
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Keywords | 保型形式 / アイゼンシュタイン級数 |
Research Abstract |
この一年は、目標としているIkeda liftのレベル付きバージョンの構成に関して、大きな進展が見られた。 Ikeda liftは次数が2の場合、Saito-Kurokawa liftと一致することが知られており、Saito-Kuroakwa liftの場合は、既に伊吹山氏が任意のレベル・任意の指標付きでリフトを明示的に構成している。今年度の大きな進展として、伊吹山氏の結果をIkeda liftに適用が可能なように書き直したことがあげられる。これは、上越教育大学の林田氏との共同研究であるが、素数レベルのEisenstein級数の中で、特にU(p)作用素と呼ばれる作用素が自明に作用する級数を考えると、そのFourier展開の言葉を用いて、伊吹山氏の与えたリフトが得られることが示された。さらに、次数2の場合の結果から、一般の次数に関してもリフトの構成を予想することができた。具体的には、通常のレベルがつかないIkeda liftの場合と比較すると、レベルが素数pである場合には、そのオイラーp因子を除いたものがリフトになると予想される。 さらに上記問題とは別に、次数が2の場合の素数レベルEisenstein級数のFourier展開の明示式と、その応用として得られる低い次数のEisenstein級数の次元に関する論文が雑誌に掲載が予定されている。この論文では原始的な指標付きの場合にしか扱えなかったが、より一般の指標、具体的には自明指標の場合も計算が可能であることは分かっている。その場合には結果の式がかなり複雑化するものの、きちんと計算しきることは意味のあることであり、計算がただいま進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標であるレベル付きのリフトの構成に関して、低い次数での構成ができたこと、一般次数での予想が立てられ、さらに証明の方針も見えかけていることなどがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、レベル付きIkeda liftの構成の完成を目指す。構成に関しての予想は既にあるため、証明をどうするかの問題である。リフトであることを示すには、保型性とL関数の対応の二つが問題であるが、L関数の対応についてはレベルがついていない場合とほぼ同様に示されることが分かる。よって保型性の問題であるが、方針としてはIkeda氏の限論文と同様な手順が最有力と思われる。すなわち、Fourie-Jacobi展開・theta展開を考え、保型性の問題を、重さ半整数のベクトル値保型形式の問題へと帰着するものである。多くの部分は単に形式的な話のため、レベルの有無にかかわらず共通であるものの、細かいところでいくつかレベル付きだと話が変わってくるところがあり、細かくすべてを詰めるのはかなり大変な作業になる。 証明についてはもう一つ可能性があり、Weissauerの逆定理を用いる手法が考えられる。Koecher-Maass級数がある種の関数等式を満たせば保型性があることを主張するのが逆定理であり、次数が2すなわちSaito-Kurokawa liftの場合には、逆定理を用いて保型性が証明できることが Duke-Imamogluにより示されている。次数が高い場合には、高い次数の特殊線形群の保型表現の解析が必要なため、それほど簡単にできる方法とは思われないが、仮にレベル付きでない場合を考えた時でも、この手法が有効なのか考えることは意味があると思われる。 また、実際にリフトになっている実例を構成するのも非常に重要である。リフトの結果得られる保型形式は、もっとも小さいものでも次数が4、重さが6であり、構成は決して容易ではない。テータ級数などを用いるため、計算機を駆使しての構成になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日程の関係などで、予定していたよりも出張などを行う機会が少なかったことが原因に挙げられる。 研究打ち合わせのための出張や、研究成果発表などの機会を増やす予定である。海外出張も含めて、研究成果の発表等を行っていきたい。
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