2011 Fiscal Year Research-status Report
対数幾何学における代数的K理論の類似物の研究とその数論幾何・代数幾何への応用
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23740030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
萩原 啓 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (30512173)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 代数的K理論 / 対数的幾何学 / 代数的サイクル |
Research Abstract |
一般に、対数幾何学における研究対象である対数的スキームに対しては、KummerエタールK群と呼ばれる不変量が定義される。これは、通常のスキームに対する代数的K群の自然な拡張の一つであり、従って通常のK群に対して成り立つ性質の多くはKummerエタールK群に対しても成り立つことが期待される。とくに、代数幾何に於ける最も重要な定理の一つであり、K群を用いて定式化されるGrothendieck-Riemann-Rochの定理はその対数幾何学的類似を持つこと、そしてその定理は対数幾何のみならず通常の代数幾何・数論幾何に多大な応用を持つことが自然に期待される。以上を踏まえて今年度は、分離閉体上スムーズかつ対数的スムーズな対数的代数多様体間のexactな固有射という実用上十分に一般な状況において、実際に対数的Riemann-Rochの定理と呼ばれるべき定理が成り立つことを証明した。また、KummerエタールK群自身の構造に関しては、一般に分離閉とは限らない体のスぺクトラムを底空間にもつ対数的点に対してもその構造を明らかにした。この結果を深化させ上記の定理と組み合わせることで、より一般の対数的スキーム間の射に対しても対数的Riemann-Rochの定理が定式化・証明できること、そして代数幾何・数論幾何へのより広汎な応用が得られることが期待される。一方、モジュラー曲線などの数論的に重要な代数多様体に対し、この定理を実際に適用して様々な不変量の計算を行った。これは今後、この定理のさらに深い応用を発見し、また不変量に関する新しい現象を調べる上で重要な知見を与えてくれるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった、数論的不変量のp進的挙動の考察という点に関しては未だ大きな進展は見られないものの、当該不変量のBernoulli数等との深い関わりについては、対数的Riemann-Rochを通して各種の代数多様体に対して明らかとなった。また、K群の構造分析やRiemann-Rochの定理の証明に関しては一段落ともいえる一定の進展を見せた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえて、次年度は定義体が分離閉であるという仮定を外した上で対数的Riemann-Rochの定理を証明する。また、非特異とは限らない場合、即ちトーリック特異点を持つ場合や、exact log平坦位相などの他のGrothendieck位相を用いて定義されるK群に関してもそのRiemann-Rochの定理の可能性を考察する。それと並行して、対数的Riemann-Rochの定理の応用のみならず定理自身の深化を見据え、さらに多くの数論的多様体を対象に、引き続き諸例の計算及び(特にp進的視点からの)観察・考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集・保存のため平成23年度に納品したが、支払が来年度以降になったUSBメモリ・クリップの支払いに使用する。
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