2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740032
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
那須 弘和 東海大学, 理学部, 講師 (30535331)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 無限小変形 / ヒルベルトスキーム / 障害類 / 変形理論 / 空間曲線 / デルペッツォ多様体 |
Research Abstract |
本研究の目的は高次元代数多様体上の曲線の無限小変形の障害類が消えないための条件を明示的に与える事である。Mumfordの与えた、空間曲線のヒルベルトスキームにおける生成的に被約でない既約成分の例を一般化、もしくは簡易化することにより、曲線の変形障害と曲線を含む曲面上の第一種例外曲線との間の関係を理解する事を目的として研究を行っている。本年度は、昨年度に引き続き3次元以上の様々な単線織代数多様体とその上の退化曲線に対し、1位無限小変形が2位変形にリフトする為の障害類の計算を行った。また、曲線の含まれる超曲面上の可縮因子と、曲線の変形障害との関係を調べた。超曲面の極付き無限小変形(法束の有理切断)について考察し、極付き無限小変形の2つの幾何学的な解釈(「開多様体の無限小変形」と「ブローアップした多様体上の無限小変形」)を与えた。またリエゾンの理論を応用することにより、低次空間曲線のヒルベルトスキームの既約成分を分類し、既約成分の一般元である曲線を低次曲面や定義イデアルの極小自由分解を用いて記述した。東海大学で開催された可換環論と表現論の研究集会に参加し、本研究に関する講演を行った。また3次元単線織多様体上の曲線の変形障害の研究に関する一連の結果を整理し、広島大学と東京大学のセミナーにおいて発表し、本研究課題に関する議論を行った。京都大学やハーバード大学で開催された研究集会に参加し、他の参加者達と有益な情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高次元スクロール上の退化曲線の変形障害を計算したが、射影空間の直積上の曲線以外に被障害曲線の例が見つからず、多様体の高次元化により見えると期待した第1種例外曲線の果たす役割がまだ見えていない。申請者の所属機関の変更に伴う研究環境の変化への対応が遅れたことも関係する。
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Strategy for Future Research Activity |
他の有理的代数多様体上の退化曲線の変形障害についても研究する。ファノ多様体やカラビヤウ多様体上の曲線からも、被障害曲線の例が得られないか可能性を探る。本年度は今年度までに得られた1位無限小変形に関する結果をもとに、高位無限小変形のリフト障害に関する研究を行う。1位変形から2位変形へのリフト障害は、コホモロジーのカップ積による表示が知られているが、2位変形から3位変形、あるいは、より高位の変形へのリフト障害についてはまだこのような表示が知られていない。具体的で計算可能な表示を与える事を目的とする。もし与える事に成功すれば、Kleppe-Ellia予想の進展が期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費の一部は研究環境の整備(書籍や計算機などの購入)に充てたい。当該研究費が生じた状況は、震災への対応に伴う研究費の慎重な執行に留意したことによる。夏期休業を利用して、京都大学数理解析研究所を訪問し、代数幾何学の分野における研究者達と集中的に議論を行う予定であり、出張費として用立てる。高位無限小変形のリフト障害に関する研究を進展させ、国内外の研究集会において本研究課題に関する研究成果を発表する為に役立てる。
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