2011 Fiscal Year Research-status Report
超平面配置のトポロジーと組合せ論的構造:極小性とモジュライの観点からの研究
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23740050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 正彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90467647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超平面配置 / 極小性 / 基本群 |
Research Abstract |
実施計画では三つのテーマをあげていた:(1) 極小性、モジュライの連結性の周辺の整備、拡張。(2) 極小性に基づいた基本群、ホモトピー群の研究。(3) 局所系ホモロジーの計算機による計算。(1)については、直線配置補集合の極小ストラティフィケーションを記述することに成功した。元来「極小性」は知られていたが、それが主張するところの「補集合とホモトピー同値な極小CW複体」の記述は大変困難であった。極小ストラティフィケーションは、極小CW複体そのものではなく、その双対にあたる幾何構造を、明示的な半代数的集合を使って記述する方法である。いくつかある極小構造の記述方法のなかで、現在の所、もっとも明示的な記述法であり、ホモトピー型に関する応用が見込まれる。とりあえずの応用として、補集合の基本群が Positive homogeneous presentation という特殊な表示を持つことを示し、基本群の語問題が解けるための条件を定式化した。(2) については、イスラエルの D. Garber 氏を3月に招聘、集中的に議論をした。極小性から得られる基本群の表示を使った定性的な研究が主テーマであったが、副産物として、ある種の滑らかなアフィン代数曲線達の補集合が極小なホモトピー型を持つという事実を発見した。これは直線配置の補集合の極小性を大きく一般化する予想外の事実であり、現在論文を準備中である。(3) は「超平面配置の補集合の局所系係数ホモロジーが組合せ論的に決まるか?」という未解決問題や新たなRybnikov型の例(Zariskiペア)を視野に入れた研究である。直線配置のZariskiペアとなりそうな例は多く見つかり、それらを局所系係数ホモロジーで区別できないか、片端から計算機でチェックしたが、今のところ具体的な証拠は見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の三つのテーマに関して、(1)については、伊藤公毅氏との論文、および直線配置補集合の極小ストラティフィケーションを記述する論文を完成させることができた。極小ストラティフィケーションから得られる基本群の表示は、基本群の定性的性質を調べる上でも重要な役割を果たすと期待している。また2011年には、本研究計画の出発点となった、Nazir氏との共同研究を国内外の研究集会で発表する機会が何度かあり、その都度、本テーマに理解のある専門家と議論することができた。研究方針、これまでの成果、アイデアや目標を共有することができたことは有意義であった。(2) については、イスラエルの D. Garber 氏を3月に招聘、集中的に議論をした際に「滑らかなアフィン曲線達の補集合の極小性」を発見するという予想外の展開があった。これまで超平面配置特有の現象と思われていた極小性が、はるかに広い範囲で成立していることを示唆しており、当初の計画にはなかったが、この方面の研究も進めたいと考えている。(3) では20本以下の直線配置の Zariskiペア の候補がたくさん見つかったことは進展であるが、期待していた、局所系係数ホモロジーが同型でない例は今のところ得られていない。本数的に、計算機での局所系係数ホモロジーの計算の限界に近付きつつあり、「局所系係数ホモロジーが組合せ論的に決まるか?」という問題は、今のところ全ての例で肯定的である。少なくともこれまで知られている事実以外にも、この結果を成り立たせるメカニズムがあるのであろうという結論に到達した。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年6月にフランスで開かれる超平面配置のサマースクールで、本研究テーマと関連の深い数人の専門家と直接会う機会があるので、これまでに得られていることを(論文と言う形ではないにしても)整理し、議論の材料としたい。引き続き、直線配置のZariskiペアーの候補の探索、特に局所系係数ホモロジーでそれらを区別できる例の探索を行うが、局所系ホモロジー以外の位相不変量で区別する方法も考えたい。「局所系係数ホモロジーは組合せ論的に決定できる」とうい事実が、知られている範囲よりも一般的な超平面配置で成立していることがこれまでの計算結果から観察できるので、この結果を成り立たせる未知のメカニズムを探る。Garber 氏との議論を通して発見した「滑らかなアフィン曲線の補集合の極小性」は、これまでの超平面配置や代数的トーラスの部分トーラス配置に関して知られていた結果を(2次元の場合に)大きく一般化する重要な事実であり、成立範囲を早急に確定して、論文としてまとめたいと考えている。また高次元化などの一般化も考えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は6月にフランスで超平面配置のサマースクールがあり、出席するのに必要な旅費を計上する。8月には一週間前後、首都大学東京の徳永浩雄氏を北大に招聘しZariskiペアーに関する最近の進展について解説をしてもらう予定である。他に研究打ち合わせや研究成果発表のため、国内の研究集会、セミナーに何件か出張予定である。また情報収集のための書籍を購入予定である。
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