2013 Fiscal Year Annual Research Report
組み紐理論とフレアー理論を用いた結び目と横断的結び目の研究
Project/Area Number |
23740053
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松田 浩 山形大学, 理学部, 准教授 (70372703)
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Keywords | フレアーホモロジー群 |
Research Abstract |
本年度は境界付き3次元多様体の不変量を使って写像類群について調べた。 OzsvathとSzaboはヘガードフレアーホモロジー群と呼ばれる閉3次元多様体の不変量を定義していた。Lipshitz, Ozsvath, Thurstonはこの不変量を境界付き3次元多様体に拡張し境界付きフレアーホモロジーと呼ばれる不変量を定義した。境界が1つの円周からなる曲面Sは写像柱と呼ばれる境界が2つの曲面から成る3次元多様体と自然に対応するので, この多様体の境界付きフレアーホモロジーが写像類群の不変量を与えることが自然に考えられる。彼らはこの不変量が単射(忠実)であることを示した。 そこで 写像類群の中でも特に重要な部分群であるトレリ群に対して この不変量の具体的な計算を実行した。トレリ群とは 曲面Sの1次元ホモロジー群に自明に作用する写像類群の元から成る集合である。Sの種数が2であるときトレリ群の元として2種類の元が考えられる。1つはSを1つ穴あきトーラスと2つ穴あきトーラスに分ける1本の曲線Cに沿ったデーンツイストであり、もう1つはSを2つ穴あきトーラスと3つ穴あき球面に分ける2本の曲線Dに沿った適切なデーンツイストである。Cに対応する不変量は18個の生成元と62個の関係式から成る鎖複体であり、Dに対応する不変量は38個の生成元と154個の関係式から成る鎖複体であることが分かった。鎖複体の鎖ホモトピー類が写像類群の不変量である。CとDに対応する元は異なる元であることが既に知られているので これらの鎖複体は互いに鎖ホモトピーの範囲で同型ではない。しかし それぞれのホッホシルトホモロジーを計算すると同型であることが分かった。これは CとDに対応して写像柱の上下の曲面を同一視して得られる2つの多様体を 結び目フレアーホモロジー群は区別しないことを示している。
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