2012 Fiscal Year Research-status Report
非平坦カラビ‐ヤウ多様体内の特殊ラグランジュ部分多様体の研究
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23740057
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
酒井 高司 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30381445)
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Keywords | カラビ‐ヤウ多様体 / ラグランジュ部分多様体 / キャリブレーション / 旗多様体 / 対蹠集合 |
Research Abstract |
Kahler多様体において対合的反正則等長変換の不動点集合として与えられる部分多様体を実形と呼ぶ.定義から実形は全測地的Lagrange部分多様体になる.コンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉は対蹠集合になることが田崎,田中-田崎により示されている.連結コンパクトLie群Gの随伴軌道にはG不変な複素構造が入り,複素旗多様体と呼ばれる.複素旗多様体に対してはある自然数k_0が定まり,k_0以上の任意の整数kに対して,複素旗多様体にはk対称空間の構造が入る.この構造を用いて,複素旗多様体に一般化された対蹠集合を定義することができる.入江博氏(東京電機大学)、田崎博之氏(筑波大学)との共同研究により,複素旗多様体の極大対蹠集合がWeyl群の軌道になることを示した.特に,すべての極大対蹠集合はGの作用によって互いに共役であることが分かる.さらに,複素ベクトル空間内の複素部分空間の列のなす複素旗多様体において,二つの実旗多様体の交叉を決定し,横断的に交わるならば交叉は極大対蹠集合になることを示した. 球面の余接束上のStenzel計量の極限として,複素錐上にCalabi-Yau錐計量が得られる.複素錐は球面の余接束から零切断を除いた開部分多様体と同一視される.Yat-Ming Chan氏(香港大学)との共同研究により,球面内の部分多様体の余法束が複素錐のLagrange部分多様体になることを示した.さらに,この余法束が特殊Lagrange部分多様体になるための必要十分条件はもとの球面内の部分多様体がaustere部分多様体であることを示した.これはHarvey-LawsonおよびKarigiannis-Min-Ooによる余接束特殊Lagrange部分多様体の構成の類似になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複素旗多様体の対蹠集合の構造を明らかにし,すべての極大対蹠集合は互いに共役であることが分かった.また,複素ベクトル空間内の複素部分空間の列のなす複素旗多様体において,二つの実旗多様体が横断的に交わるならば交叉は極大対蹠集合になることを示た.この結果は入江博氏(東京電機大学)、田崎博之氏(筑波大学)との共著論文としてまとめ,Advanced Studies in Pure Mathematicsに掲載が決定した. 余等質性1の特殊Lagrange部分多様体について運動量写像とシンプレクティック商を用いる手法の整備を進めた.今後はこの手法を用いて球面の余接束内の余等質性1の特殊Lagrange部分多様体の分類を行う計画である. 8月に香港大学を訪問し,Yat-Ming Chan氏と複素錐内の特殊Lagrange錐に関する共同研究を行った.共同研究の出発点として,余法束特殊Lagrange錐に関する成果が得られた.今後も議論を継続し,共同研究を進展させる計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
複素旗多様体の二つの実旗多様体の交叉とLagrangian Floerホモロジーの研究を進める.古典型のコンパクトLie群の随伴軌道として与えられる複素旗多様体は複素ベクトル空間内のある種の複素部分空間の列としての複素多様体モデルをもつ.これを利用して,古典型の複素旗多様体の実形の交叉の構造を具体的に調べる.これについては入江博氏(東京電機大学)、田崎博之氏(筑波大学)と共同で研究を進める. 階数1のコンパクト対称空間の余接束に入るCalabi-Yau計量に関する特殊Lagrange部分多様体を構成し,その特異点の挙動を調べる.特に余法束として特殊Lagrange部分多様体を構成する方法を与える. Stenzel計量の極限として得られるCalabi-Yau錐内の特殊Lagrange錐の構成および変形理論について研究を行う.さらにその同時特異点解消に関する研究を行う.これらの問題についてYat-Ming Chan氏(香港大学)と共同で研究を行う. 秋葉原微分幾何セミナーおよび研究集会「部分多様体論・湯沢2013」を開催し,国内外の研究者たちと情報交換と議論を行い,活発に研究を推進する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を予定していた書籍が入手できなかったため残金が生じた.残額は次年度に有効に使用する. 国内外の研究集会での研究発表,情報収集および共同研究者との研究打ち合わせを行うため国内出張・開学出張を行う. 秋葉原微分幾何セミナーおよび研究集会「部分多様体論・湯沢2013」を開催する. 研究資料となる書籍を購入する.
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Research Products
(4 results)