2011 Fiscal Year Research-status Report
非双曲力学系の不安定周期軌道解析に関する大規模数値解析
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23740065
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齊木 吉隆 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20433740)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 力学系 / 周期軌道 / 数値計算 / 非双曲系 / カオス / リアプノフ解析 |
Research Abstract |
平成23年度は力学系の大域的な構造変化であるクライシス現象に対する不安定周期軌道解析をおこなった。アトラクタ・マージング・クライシスやインテリア・クライシスは力学系の構造を大きく変える普遍的な現象であり、非双曲構造があらわれる例である。本年度は時空カオスを示す偏微分方程式として有名な蔵本・シバシンスキー方程式に対し、まずアトラクタ・マージング・クライシスをおこすパラメタを調べ、その前後のパラメタにおいて多数の不安定周期軌道を数値的に同定した。これらを分類することによってクライシス現象を捉えなおすことに成功した。クライシスの前後では、カオスアトラクタの構造がドラスティックに変わるが、それと共に存在する周期軌道もドラスティックに変化することが見出された。すなわち、クライシス後には新たな種類の不安定周期軌道群がサドルノード分岐によって発生する。サドルノード分岐に対応して周期窓が存在するが、周期窓がクライシス点に向かって集積していくことに対応している。一方、クライシス前後で不変な構造も存在する。クライシス前はカオスアトラクタ、後はカオティックサドルとなる不変集合は安定性こそ変化するが、埋め込まれた不安定周期軌道は共通であることも確認された。カオティックサドルにはギャップ領域が存在するが、そのギャップ領域を新しく生まれた周期軌道群が埋めている。以上のようにクライシス前後で存在する不安定周期軌道の分類をおこなうことにより、大域的構造変化の背後にある骨格が理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、力学系の大規模構造変化であるクライシス前後で不安定周期軌道を数値的に多数検出することができ、それらを分類することによってクライシスの背後に存在する構造を明瞭に説明することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
リアプノフベクトルを数値的に同定することによって系のパラメタ変化に伴う多様体間の接構造発生が同定できるようになったので、平成24年度はパラメタ変化によって双曲構造が徐々に崩壊する例を不安定周期軌道の観点で研究する。平成23年度の問題と比べて、現象に非双曲構造の影響が少しずつしかあらわれないと考えられる状況に対応している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度分の一部研究費の支給が延期されたため、当初予定されていた研究打ち合わせのための国内出張が24年度にずれ込んで未使用額が発生した。24年度に出張予定である。
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