2012 Fiscal Year Research-status Report
特異性を持つ非線形積分方程式に対する解の数値的検証法の研究
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23740074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 武彦 京都大学, 学際融合教育研究推進センター 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定講師 (30546429)
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Keywords | 積分方程式 / 微分方程式 / 有限要素法 / 精度保証付き数値計算 |
Research Abstract |
1.常微分方程式系の初期値問題に対する有限要素法の安定性解析に取り組んだ.この問題に対し,最も単純な Galerkin 法に基づく有限要素法では近似解の安定性がないという興味深い結果を得た.これは有限要素法を使って常微分方程式を解く際に重要な知見となると思われたため,論文として公表した.また,常微分方程式系の初期値問題に対し Petrov-Galerkin 法に基づく有限要素法の提案を行った.提案手法では近似解の安定性および収束性が保証され,特に定量的な誤差評価が得られる事が特徴である.このような定量的な誤差評価は中尾充宏教授によって提案された精度保証付き数値計算の理論において必須となる.本結果により,非線形常微分方程式系の初期値問題の解に対する精度保証付き数値計算法の構築が可能であると予想される. 2.Fused Multiply-Add (FMA) と呼ばれる,積和演算命令を用いた並列化区間演算ライブラリの開発に取り組んだ.微分方程式や積分方程式の解を検証する際に,区間演算と呼ばれる計算手法が必要となる.区間演算の計算量は近似計算の数倍になるため,解の存在検証プログラムにおいてほとんどの計算時間が区間演算に費やされる.しかし,現在公開されている区間演算ライブラリはいずれも逐次計算を前提としており,現在の計算機環境に合った物とは言い難い.よって,本区間演算ライブラリでは並列計算および FMA を用いて高速な区間演算の実現を目指した物となっている.また,区間演算には丸め誤差の積み重ねによる区間拡大がしばしば問題となる.この問題を克服する為には,本質的には,計算精度を上げるしか無い.本ライブラリでは倍倍精度演算を用いた高速な擬似四倍精度区間演算の他,藤原宏志先生らと共同で多倍長区間演算にも対応する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では岡山・松尾・杉原らによる二重指数関数型数値積分公式の誤差評価を用いて,非線形積分方程式の解の存在を検証する理論を構築する予定であった.しかし,国内の研究集会において全く同じ方針の研究を行っている発表があった.そこで本研究では積分核を使った特異性を持つ積分方程式だけではなく,これと同値な特異性を持つ微分方程式に対する解の存在を検証する方針も視野に入れて研究を続けている.その際,常微分方程式に対する有限要素解の安定性に関する知見が得られ,論文として出版された. また,並列化区間演算ライブラリについては,これまで提案されてきたアルゴリズムの調査,実装中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は当初の特異性を持つ積分方程式だけではなく,これと同値な特異性を持つ微分方程式に対する解の検証手法を研究し,他の研究者との競合を回避する.特に,特異性を持つ微分方程式に対しては,今年度得られた知見を元に連立常微分方程式系の初期値問題として狙い撃ち法による解の検証方法や,重み付き関数空間を利用した解の検証方法を検討する. これと平行して並列化区間演算ライブラリの開発を推める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は当初計画していたよりも多く国際会議で研究成果の報告を行ったため,予定していたノートパソコンやソフトウェアの購入を見送った.次年度は夏頃にインテルから新しい世代の CPU が発売される予定であり,現在作成中の区間演算ライブラリをこれに対応させるため,この時期にノートパソコンを購入する予定である. それ以外の研究費の使用計画は当初の計画通りとする.具体的な用途は,スーパーコンピュータ利用料,ソフトウェアの購入,国内外旅費,外国語論文の校閲費である.
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Research Products
(10 results)