2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740078
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩沢 裕一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60454518)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 対称マルコフ過程 / 飛躍拡散型マルコフ過程 / ディリクレ形式 / 保存性 / Silverstein 拡張 |
Research Abstract |
本年度の主な成果は以下の2つである。1.対称な飛躍拡散型マルコフ過程の保存性 正則ディリクレ形式から生成される対称な飛躍拡散型マルコフ過程が保存的であるための十分条件を与えた。保存性とは「ランダムに運動する粒子が状態空間に留まる」性質のことであり,確率過程の基本的性質の一つである。拡散過程については,体積増大度と係数の大きさで保存性を特徴づける結果が数多く知られている。一方で,飛躍型マルコフ過程については,体積増大度に関する特徴づけが近年 Grigor'yan et. al. によってなされた。また,係数の大きさによる特徴づけについては,以前に報告者が上村稔大氏(関西大学)と共同で調べた。本研究成果は以上で述べた先行結果の拡張・一般化となっており,例えば係数が非有界性であることを許すとともに,その連続性は不要である。 例えばこのことより,係数が不連続なために,確率微分方程式を用いて構成することが難しい飛躍型マルコフ過程についても,保存性を判定することが可能となった。2.対称ディリクレ形式の Silverstein 拡張の一意性 桑江一洋氏(熊本大学)との共同研究で,対称ディリクレ形式のSilverstein 拡張が一意的であるための十分条件を内在的距離によって与えた。Silverstein 拡張は境界分類を目的に導入された,ディリクレ形式の拡張に関する概念である。対称ディリクレ形式が保存的ならばSilverstein拡張は一意に定まり,さらに強局所型ディリクレ形式については,保存的ではなくても一意性が成立し得ることが知られていた。本研究では非局所型ディリクレ形式について同様の例を構成することができた。特にこの例では無限遠点が``流出境界"になることが分かり,飛躍型マルコフ過程の境界分類の足掛かりになる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対称マルコフ過程の保存性や Silverstein 拡張の一意性について予想以上の結果を得ることができたため。しかし,ランダム環境中の分枝ブラウン運動の解析については進展がなかったことは今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究を通じて,下記の新たな問題に遭遇した。・飛躍型マルコフ過程について,大きな飛躍が保存性に与える影響をとらえること。・対称ディリクレ形式のSilverstein 拡張が一意的に定まるための(十分)必要条件を調べること。さらに,一意的ではない場合,拡張を決定すること。以上の問題について,それらの意義を考えながら整理して,研究に着手する。さらに,当該年度に得た結果を国内外の研究集会で発表するとともに,研究者と議論を重ねる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・研究集会への参加及び研究発表のための旅費。・「岡山解析・確率論セミナー」の講演者の旅費。・研究打ち合わせのための旅費。・研究関係書籍の購入費。
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