2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740078
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩沢 裕一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60454518)
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Keywords | マルコフ過程 / ディリクレ形式 / 保存性 / Escape rate / Silverstein 拡大 |
Research Abstract |
1.昨年度の研究成果の応用として,ある飛躍型マルコフ過程について,対応するディリクレ形式から自然に定まる「係数」が状態空間の境界である程度退化すれば,保存的になることを示した。係数が退化しない場合は爆発することが知られているので,飛躍型マルコフ過程の道の性質も「係数」から影響を受けることを具体的に確かめたことになる。なお,昨年度の成果と本成果をまとめた論文は,雑誌に掲載されることが決まった。 2.桑江一洋氏(熊本大学)と共同で,正則ディリクレ形式から生成される対称マルコフ過程の Silverstein 拡張の一意性を,Frank-Lenz-Wingert が導入した内在的距離を用いて特徴づけた。その応用として,重み付きグラフ上のマルコフ連鎖について,保存的ではないが Silverstein 拡張が一意的に定まるものを見つけることができた。 3.Xueping Huang 氏(FSJ Jena)と共同で,重み付きグラフ上のマルコフ連鎖の escape rate を調べた。これは,粒子の移動範囲(長時間経った後)を測る量であり,保存性の定量化版ともいえる概念である。本研究では,多様体上のブラウン運動の場合と同様に,マルコフ連鎖に「適合した」距離に関する球の体積増大度を用いて escape rate を具体的に与えた。特に,今回の結果は精緻であることも分かる。 4.日本とドイツの研究交流を図るための国際研究集会「Stochastic Analysis and Applications」,マルコフ過程をテーマとした研究集会「マルコフ過程と確率解析」,岡山周辺の研究者を対象とした「岡山解析・確率論セミナー」などの世話人の一人を勤め,研究交流や情報交換を行った。なお,本研究費の一部を講演者の旅費にあてた。 5.確率論に関する国内外の研究集会に参加し,研究発表および情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重み付きグラフ上のマルコフ連鎖について,Silverstein 拡大の一意性および escape rate を通じて,大域的性質を詳しく調べることができた。このことは,申請時当初の計画以上の進展である。その一方で,ランダム環境中の分枝ブラウン運動の研究については進展が見られなかった。以上より,自己点検評価は②である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究を通じて,一般の対称マルコフ過程について,「大きな飛躍が保存性およびescape rate にどのような影響を与えるか」という問題に興味を持った。今後は,それらの意義を考えながら整理して,研究に着手する。さらに,当該年度に得た結果を国内外の研究集会で発表するとともに,研究者と議論を重ねる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・研究会参加および研究打ち合わせに係る旅費 ・セミナーおよび研究集会での講演者招聘に係る旅費 ・関連書籍の購入費
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